第570話 朱莉対夕乃

夕乃が落ち着いてきたので、

朱莉が今後の鳳凰寮での説明を始めた。


「遼香さんはいつも通りの時間でいつも通りの生活を続けてもらうことにします。

寮のみんなには迷惑をかけちゃうかもしれないけど、

みんなも普段通りの生活をしてくれたらいいから。

もちろんこの寮のことは外からしっかり守るようになっているから、

あまり心配はしすぎないように。

ただ一人での外出は危険なので、

必ず誰かと行動してほしい。

今日から代田さんと緑箋さんは寮内で生活してもらうことになります。

たえさんと一緒にということね。

遠隔で仕事をしたり、

また訓練をしたりというのは変わらずに行ってもらいます。

カレンさんたちはこのまま解放区の方での活動をしてください。

三人で行動するのは今までと同じですね。

一人で残るということがないようにしてください。

私と遼香さんは基本的には一緒に行動します」


「はーい、私もいるので心配ありません!」


「私がいないときも夕乃さんがいてくれるので、

遼香さんも安心してください」


「腕は確かだからそこは心配していない。

別のことで心配なことが起きそうではあるが」


「えーそんなことないですよう。

結構有能なんですから、夕乃だけに!」


前途多難である。

いつもは突っ込む朱莉も今回は拾わない。

触れるとさらに動き出すことを朱莉もよく知っているのだ。


「一応予言ではここ一週間くらいという話なので、

それまでは油断しないで、

みんなでこれを乗り切っていきましょう!」


「ちょっと朱莉ちゃん?

私、結構いいこと言ったのに!」


朱莉は完全に無視を決め込んでいる。

無視をすればするほど鬱陶しくなるのだが、

触ってより動き出される方がより厄介なのである。

とはいえ、夕乃も夕乃で諦めが悪い。

二人の攻防は続く。


「もし何かあったらすぐに私に連絡してください。

小さな異変を感じただけでも構わないので、

迷惑とか考えずに、

今回はなんでもすぐに連絡してくださいね」


「私は遼香ちゃんと一緒にいるから、

すぐ朱莉ちゃんに連絡するな!」


流石にみんなも面白くなってしまい、

くすくすと笑いが漏れ始めている。

朱莉は夕乃の方を向いた。


「夕乃さん」


「やっと話しかけてくれた!」


「諜報部の方で何かわかってることはありますか?」


朱莉がついに負けを認めたのかと思ったが、

別にそういうわけではなく、

夕乃に普通に今回のことでわかっていることを説明してもらいたかっただけである。

朱莉はなんとかその話をさせることで、

この攻防を終わらせようとしていた。


「なんだ、そんなことか!

せっかく朱莉ちゃんが振ってくれたから、

本当は漏らしちゃいけないんだけど、

重大な情報を教えちゃいますね!」


確かに諜報部の情報をここで公開していいのかという疑問はあるが、

夕乃に関してはそんなことはどうでもよさそうでもあるし、

なんなら遼香がここにいるわけなので、

おそらく大丈夫なのだろう

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