第566話 白龍寮への連絡

緑箋は白龍寮に連絡を取ることにした。

こちらの都合もあるが、

別々に話をするよりもまとめて話をした方が、

もしかしたら別の考え方もあるかもしれないと思い、

緑箋は二人に同時に伝えることにした。


「すみません、わざわざ時間を取らせてしまいまして」


「いつでも連絡してっていうてるやんか。

気にせんでええねんで」


「そうだ。こっちも気にする必要はないで。

むしろ連絡してくれた方がありがたいわ。

緑箋みたいな気骨のある奴がなかなかおらへんでな」


関西人二人である。

折に触れて連絡はとっているし、

この前会ったばかりでもあるが、

このような連絡をするというのは珍しい。


緑箋はかいつまんで、

遼香の予言のことと、

予言が起こる場所が白龍寮かもしれないという話を説明して。

緑箋の説明を、

咲耶も守熊田も珍しく口を挟まずに聞いてくれた。


「すみません。あまりにも荒唐無稽な話かもしれませんが、

なんだか気になってしまったのと、

遼香さんからも伝えた方がいいと言われたので、

いま情報を伝えた次第です」


笑い飛ばされるかとも思ったが、

二人ともかなり真剣な表情である。

なぜなら咲耶も未来視ができるし、

守熊田はこのような予言によって戦況を左右されることがあっただろう、

歴戦の猛者なのである。


「確かに緑箋の言うとおり、

どないっせいっちゅう話ではあるんだが、

この情報をこっちに知らせてくれたんは、

めっちゃありがたいと思ってる」


「ありがたい、ですか?」


「せやなあ。

簡単に言えば、

頭の片隅にでも考えていることが起こんのと、

全く何も考えていなかったことが起こるんとでは、

動き出しは全く変わってくるからな。

今聞いた予言がもし白龍寮で起こるとしたら、

それは単純な話やなくなってくるかもしれへんからな。

あらゆることを想定して生きるなんてことは人にはでけへんねん。

でも起こりそうなことに対処するんは、

意外とできるもんなんや。

ここは大きな違いがあんねん。

もちろん何もないに越したことはないんやけどな」


守熊田はそういってくれた。


「今寮長が言った通りやけど、

うちの方は今のところは怪しい気配は感じてないかなあ」


咲耶の未来視も見たいものが見れるわけではないので、

予言と似たようなものではある。

ただ集中力を上げることで、

近々の出来事の未来をより見ることができることもあるようだが、

まだそれもないと言うことは、

即明日何か起こると言うことでもないようである。


「二人はこの話を聞いてどう思いましたか?」


「うちは結構未来そのものが見えるんやけど、

それはかなり近くの話やから、

魔女さんの予言のような、

全く関係のない大きな未来みたいなのはわからへんねん。

歴史が変わるみたいなんは見たことがないねんな。

能力がやっぱり違うんやね。

ただあながち間違ってないんやないかなっていうのが、

正直な印象やね。

そうなると遼香ちゃんが危険な目におうてまうんやけどな……」


「咲耶がいったとの同じ印象やね。

用心するんには越したことはない。

こっちもしばらくは警戒度をあげておくから、

こっちのことはあんまり心配すんな。

まずは自分のできることをしっかりやることを第一に考えろ。

多分それできっとうまくいく」


二人は真剣に話を聞いてくれた。

本題が終わった後、

イギリスで起こった話も二人に聞いてもらい、

二人からは寮のことや学校の話を聞かせてもらった。

二人とゆっくり話して、少しだけ緑箋の心も落ち着くことができた。

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