第565話 方針の確認

結局のところ、どこもあの予言について持て余しているのだ。

緑箋だけに限ったことではない。

誰も彼も、遼香の身の安全だけは確保したいのだが、

どうしたら良いのか、どうしたら防げるのかは誰もわからない。

だから対処のしようがない。

軍や国の頭脳を持ってしても同じような回答であることに、

緑箋はなんだか自分が悩んでいることがおかしくなってしまった。

緑箋は素直に自分が考えたことと確認したことを、

遼香と朱莉に話した。


「確かに大きな白い建物というのは、

白龍寮に近いかもしれない。

単なる偶然かもしれないけど、

遼香さんが行ったことがある場所としては、

興味深い場所ではあるわね。

遼香さんはどう思います?」


「わからないというのが正直なところだなあ。

行く予定はないが、

行かないということもないだろう。

行く時には行くんだからな」


わからないのは当たり前の話である。

しかし、遼香ならわざと白龍寮に訪問するという可能性はある。


「それで緑箋君は白龍寮にどう伝えたら良いか悩んでるわけね。

私は伝えても伝えなくてもいいとは思うんだけどね。

どうしたらいいのかしらねえ」


朱莉もやっぱり悩んでしまった。

朱莉も時間が経って、

あの予言の衝撃に慣れてきて冷静になっているのだ。


「いや、伝えておいた方がいいと思う。

緑箋君割るけど、白龍寮と連絡をとっておいてほしい。

普通に予言のことと、

その場所が白龍陵かもしれないということを伝えておくだけでいい」


遼香は偉く冷静にそういった。

朱莉は遼香の口ぶりからその意を汲んだようだった。


「それって、本当に白龍寮が舞台になると思ったんですね?」


「まあ、ただの勘だ。

もしくは先入観ってやつだろう。

だが情報を知っておくのと知らないのでは対処のしようが違う。

幸いあそこには知り合いもたくさんいるからな」


もし白龍寮が舞台になるとして、

防衛の要だった守熊田の魔力を借りれるのは心強い。

さらに未来予知が出来る咲耶もいるから、

何か情報が得られるかもしれない。

そう言った意味で話を聞いてもらうのはいいかもしれない。

緑箋は情報が整理されて、

自分の感情も整理されていった。


「今夜のことだが、

今夜はもうこのままでいいと思う。

時間的には日中の話だから、

予言については今日のところはもう安全だろう」


すでに日は落ちて夜である。


「そうですね。できるだけ普通に生活していきましょう。

カレンさんは明日は解放区へいってください。

解放区のみんなも寂しがっていると思いますから」


「わかりました。ありがとうございます」


カレンはそういうとゾードとザゴーロと見つめ合って微笑んだ。


「じゃあ僕は向こうと連絡をとってみますね。

ではお先に失礼します」


そう言って緑箋は先に食堂を出た。

先ほど食堂に来た時よりは落ち着いた顔を取り戻していた。

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