第563話 それぞれの予言の対処法

緑箋の問いに対して、

みんなもどうしたらいいのかと頭を悩ませている。

口火を切ったのはゾードとザゴーロだった。


「私たちは皆さんとの関係もまだそれほど深くないので、

第三者的な立場からのお話ということになりますが、

先ほども申し上げました通り、

予言の実現性というのは高くないこともありますし、

高いこともあります。

しかしそれは結果として起こるか起こらないかの違いでしかなく、

予言が当たったのか当たらなかったのかというのは、

実はよくわからないものなのです」


「魔族の予言も当たらないことがままありましたが、

予言者は都合の良い解釈をして、

ここが当たったとか、

私が予言したから回避できたとか、

そういう話になることがほとんどでした。

ですので、あまり気にしすぎない方がいいのではないかというのが、

正直な感想です。

もちろんいついかなる時も敵襲に注意することは必要です」


ゾードとザゴーロは本当に一般の感覚というか、

いいも悪いもない先入観のない解釈をしてくれた。

カレンにもいろんなことがあったのだろう。

情報の取り扱いに慣れている感じがした。


「私は逆に、お知り合いがいるんだったら、

伝えてあげた方がいいような気がするんです。

本当に予言が当たるのかはわからないんですが、

もし本当に起こってしまったら、

その時に教えてもらっていなかったと知ったら、

すごく後悔するんじゃないかと思うんです。

何ができるかはわからないですが、

今私は説明されて良かったなと思いましたので、

寮のお知り合いの方には伝えてあげてもいいのかなって思いました。

すみません、予言が本当に起こるとかいうのは……

その……あの……縁起でもない事なんですが……」


たえは両手を握って心配してくれている。


「私もたえに賛成だな。

ゾードさんとザゴーロさんたちと同じように、

予言についてはそんなに気にしなくていいと思っているので、

それほど重い感じじゃなくて、

情報として伝えるのはありだと思います。

世間話程度でもいいんじゃないかなと。

予言自体の信憑性もそうですが、

場所についてはもっと確率は低くなりますからね」


代田はそれほど予言については深く考えていないようである。

遼香が対象なので、

なんとでもなるだろうという気持ちもありそうだ。


「私は……そうですね……。

正直に言ってどうしたらいいのかわかりません。

予言を聞いた時から、

私に何かできることはないかと考えてしまっていますが、

何もできることがないなとも思っているんです。

ですから聞かされた時に、

お相手の方がどう思われるのかというのが心配です。

なんだか私も優柔不断なので……。

こんなお答えになって申し訳ないです」


結局三者三様という結果になったが、

自分の考えを話すうちに、

そしてみんなの意見を聞いているうちに、

緑箋は自分の気持ちがはっきりしてくる気がした。


「いや皆さんとても参考になりました。

ありがとうございます」


そう緑箋が感謝を告げたところで、食堂の扉が開いた。

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