第559話 緑箋の閃き

食堂ではみんなが盛り上がって話を続けていた。


緑箋の肩では龗が寝ている。

今回の旅行ではずっと静かに寝ていたので、

服の飾りのように思われるくらい、

龗はずっと静かだった。

いつも静かではあるのだが、

あまり動かなかったことに緑箋は少しだけ心配していた。

しかし、別に辛そうでもないし、

緑箋から離れることもなかったので、

そっとしておいた。

子供に見えるが、

緑箋よりも長い時を生きているし、

実際に困ったことがあれば緑箋に何か行動で示してくるはずだと、

緑箋はそう信じていた。

龗は今もスヤスヤと眠っているだけなのだが、

もしかしたら、魔力を貯めている、

何かの嵐の前触れなのかもしれないなとも感じていた。


遼香と朱莉は報告があったり、

溜まっていた仕事を片付けたり、

そして遼香への対処を行なったりするということで、

今日は遅くなるという連絡があった。

ああ見えて二人は多忙である。

それに加えてあの予言なのだから、

大慌てであろう。

しかしそれを外には全く見せないのが、

あの二人のすごいところである。


ということで夕食を先に食べることになった。

帰宅組はさらに荷物を片付けてから、

夕食作りを手伝うことにした。

みんなが一緒になって寮のことをやるというのが、

鳳凰寮では決まりのようになっていた。

意外とたえがなんでもしてしまうので、

緑箋と代田は運ぶくらいになってしまうのだが、

それでもやっぱりみんなで何かをやるというのは楽しい。

緑箋はずっと共同生活などできるはずがないと思っていたが、

白龍寮と鳳凰寮での暮らしで、

その考えが一変した。

緑箋は白龍寮も楽しかったなあと思い出していたら、

ビビッと頭に電流が流れるような閃きが起こった。


「ごめんなさい、ちょっと席外します!」


普段とは全く違った緑箋の行動にみんなはびっくりしたが、

緑箋は食堂を出て自分の部屋に戻った。

そしてメアリーに連絡を取った。

帰ったばかりの緑箋から連絡がきてびっくりしたようだったが、

緑箋が送った白龍寮の写真を見て、

メアリーのぼんやりとした記憶が少しだけ蘇ったようだった。


「この写真、あの予言の時に見た景色と比べてどうでしょうか?」


「確かに真っ白な建物というのを話したと思うけども、

これだという確証はやっぱりわからないなあ。

ただ、似ているような気がするのは確かだわ。

緑箋さんが送ってきたこの建物の写真は、

私が見た映像の角度とも違うから、

同じだとはは言えないし、

予断を持たせても行けないから、

やっぱり確実にこれだと断言はできないわね。

ただやっぱり似てることは似てるわね。

この大きさは私の記憶と合致する気がする」


「すみません、その言葉だけでもありがたいです。

必ずこの予言の出来事を上手に終わらせて、

また笑顔で会いに行けるように頑張ります!」


緑箋は珍しく力強く宣言すると、

メアリーもそうなると信じてるわと言ってくれた。

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