第557話 イギリスからの帰国

代田は胸についたウィズダムの羽を嬉しそうに触っている。


「あの、申し訳ないんですが、

あともう少し羽をいただけないでしょうか?」


代田はそうお願いをした。


「はは、もちろんいいですよ」


メアリーは快諾する。


「ちょっとメアリー様、

私の羽はそんな無闇矢鱈にばら撒くようなものじゃありませんよ!」


ウィズダムは抗議するも、

メアリーに目を見つめられると観念したようだった。

私もお願いしますと、朱莉とカレンもお願いをした。


「ったく。メアリー様に感謝しろよ!

ウィズダム様のことはもっと感謝しろ!」


ウィズダムはそう言いながら渋々と羽を飛ばした。

そしてメアリーは先ほどのように羽に魔法を込めてくれた。


「大切な人に渡しておあげなさい」


「ありがとうございます!」


代田と朱莉とカレンは感謝して、大事に羽をしまった。


「それじゃあお暇しましょうか。

メアリー様、ありがとうございました。

また来ますね」


シルヴィアがそろそろと言うことで場を納める。


「ああ、いつでもいらっしゃい。

あなたたちならいつでも歓迎するよ」


「ふん、まあ来たらまたもてなしてやるよ!」


「あら珍しい。ウィズダムがそんなこと言うなんて。

ちょっと気に入ったんじゃないの?」


「そんなことありませんよメアリー様!」


ウィズダムは照れたのか、ばっと飛び上がった。


「ほら、送ってやるからついてこい」


ウィズダムは来た時と同じように先導してくれるようだ。

みんなはメアリーに何度も感謝を告げてから、部屋を後にした。

ウィズダムは文句も言わずにそれを待っていてくれた。


魔女の館を出ると、ウィズダムは翼をふる。

すると音もなくまた扉が開いていく。


「じゃあ気をつけて帰れよ!」


「ありがとうウィズダム!」


朱莉は調子を取り戻したようで、

明るくウィズダムにさよならをいう。


「ああ、お前も元気出せよ!

お前がしょぼくれてちゃ、

うまくいくもんもうまくいかなくなっちまうぜ」


「あははは、そうだね!

ありがとう!

ちゃんとやるから安心して。

その時はまた報告しにくるから」


「ああ」


みんなは手を振ってウィズダムと別れた。

また静かに扉が閉まっていった。


いつでも来い。


朱莉は、最後そう言われた気がした。


来た時とは違って、

一応警戒を高めながら一行は宿まで戻る。

特に何も起こらなかったので安心して、

荷物をまとめて、UK軍の前まで行く。


「シルヴィア、いろいろありがとう。

ほんとに有意義だったよ。

また正式に挨拶に来るし、

日本にも来てくれ」


「こちらこそ楽しく過ごせたし、

勉強にもなったよ。

それにこっちの方が沢山助けてもらった気がするよ。

ありがとう!」


みんなもシルヴィアに感謝をして、転送装置へと入っていく。


「遼香、私は何も心配してないからな。

また日本に行くときには、

今日よりももっと案内してもらうから覚悟しておいてくれ。

みんなもまたいつでも遊びに来てくださいね」


シルヴィアは明るく手を振ってくれた。

転送装置は動き出す。

長いような短いイギリスの旅はこうして幕を閉じた。

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