第549話 魔女について

魔女への偏見が高まっていくと、

中世ヨーロッパにおいて魔女狩りが行われるようになる。

そして魔女を裁判にかけて処刑する。

結局これは社会不安や宗教的な対立を鎮めるための手段として、

また、政治的な目的で魔女は利用されてしまった。


魔女と告発されるには、様々な理由があり、

奇病にかかっていたとか、

村の掟を破っていたとか、

単に近所の人と仲たがいしていたりといったことが、

魔女とみなされた。

もはや言いがかりである。


そして魔女は自白をさせるために拷問にかけられる。

拷問によって魔女とされた女性は耐えられずに自白してしまい、

結局そのまま有罪の証拠とされて処刑さてしまうことになる。


長い間続いた魔女狩りも17世紀以降、徐々に衰退していくようになる。

科学の発展や啓蒙思想の普及によって、

超自然的な力に対する信仰が薄れていったことが要因とされる。

つまり当たり前が当たり前と認識されるようになったということである。

そして、魔女狩りの非人道性はおかしいということで、

人々の意識が変化していったということなのだろう。


そういうことで魔女のイメージも固められてくる。

醜い老女の姿で、緑色の肌に、疣贅(いぼ)がいくつもあり、

長い爪で、巨大なツボで薬を煮込んでいる、

黒猫を連れて、夜空を魔法の箒に乗って飛び回り、

森の奥深くにある小屋でサバトと呼ばれる集会を開いている、

それが魔女の姿として信じられるようになった。


そんな恐ろしかった魔女も現代日本では大きくイメージを変えている。

愛らしい姿で魔法の杖を振り、悪と戦う姿が定番になっている。

魔女は、もはや悪役ではなく、正義の味方として描かれることが多い。

魔女から魔法少女へと変身してしまったのだ。

それは魔女の力なのか、

それとも日本の持つ力なのかわからないが、

魔女は魔女として魅力的なものになったのだ。


そんな魔女だが、

この世界の魔女も悪ということではないようだ。

どちらかというと自然と共にあり、

自らの魔法を探求するような魔法使いであるらしい。

全ての人間が魔法使いであるこの世界では、

魔法が使えることは珍しくもなんともないのだが、

その中でも魔力が強いもの、

また魔力への探究心が強いもの、

それについて敬意を込めて魔女と呼んでいるということらしい。


メアリーはそんな魔女の中でもイギリスでは最高の魔女と称されている、

ということをウィズダムが滔々と述べている。

メアリーがいかに凄い魔女であるのかを詳しく教えてくれている。

ウィズダムは口は悪いが喋りも上手く、

メアリーに対しての尊敬の念だけはとても伝わってくる。


「まあウィズダムが言ってることは誇張しすぎてることも多いんだけれど、

少しだけ魔法について探求しているというだけなのよ」


「いやそんなことはありません。

メアリーにはたくさん助けられていますから」


「シルヴィアとも懇意にさせてもらってるの。

魔女と言ってもそんなに大したものじゃないんだから、

皆さんも仲良くしてください。

私はその方が嬉しいんですから」


ウィズダムがお前ら如きがメアリー様とと言いかけると、

メアリーは優しくウィズダムの口に指を当てた。

流石にウィズダムも静かになった。

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