第546話 突然の呼び出し

講演会が終わり、みんなは今回の成功を喜んで談笑していた。

すると一人の伝令が入ってきた。


「シルヴィア様、メアリー様がすぐに来るようにというお話です」


「メアリー様が?

わかったすぐに行く。

皆さん、すみませんが急用ができましたので、

ここで失礼します」


そう言ってシルヴィアが席を立とうとすると、

伝令は慌てて言葉を繋いだ。


「いえ、シルヴィア様、

メアリー様は日本からの客人を連れてくるようにという仰せであります」


「なるほど、そういうことですか……。

遼香すまないが、もう少し時間をもらえるだろうか?」


「メアリー様というのは、あのメアリー様なんだろう?」


「まあ、そういうことになるな」


「じゃあ、行く行かないではなくて、

行くことが決まってるんじゃないのか?」


「まあ、そういうことになるな」


遼香とシルヴィアは笑い合った。


「断ったらどうなるかみてみたい気もするが、

せっかくだからみんなにも会わせたい気もする。

喜んでお話を伺いに行こう。

みんなもすまないが一緒に着いてきてくれ」


メアリー様というのが。

日本から来た一行を連れてこいということしかわからなかったが、

遼香が素直に話を聞きたいと思えるような人だということはわかった。

それならば誰も文句を言うものはいない。

せっかくイギリスに来ているのだから、

できることはなんでもしておいた方がいいだろう。


シルヴィアは講演で倒れた人間の調査を指示して、

また一行は部屋を出た。


転送装置で出た先はまたまた森の中だった。

霧に囲まれた森はエルフの時と同じように、

人の侵入を拒んでいる。

とはいえ転送できるのだから、

人との交流がないわけではないようである。


日中なのに霧で視界は悪く、

足元に照らされてる光が一向を導いている。

霧の中を進むと、

妖精が飛んでいるのが見える。

緑箋たちをみて、何か囁いているのか笑っているのか、

四方八方から声が聞こえてくるようになってきた。


「いたずら好きの妖精です。

まあそれほど酷い目には合わないと思いますが、

耳を貸さないように、ついてきてください。

これもこれから行く先を守るための罠みたいなものでしょう」


妖精の囁きに包まれながら、

その姿は綺麗だと朱莉は少し興奮しながらも、

離されないようにシルヴィアについていく。


足元の光に導かれるままに、

霧の中の森を進んでいくと、

ようやく前に大きな建物が見えてきた。

いや、近づいていくとそれは建物ではなく、

巨大な樹だとわかってきた。

その巨大な樹の周りは壁に囲まれていて、

正面には巨大な門が姿を現した。

門は蔦に覆われており、巨大な樹と壁と同じように自然に溶け込んでいる。


シルヴィアが門を叩くと、

後ろから声がした。

しかし後ろを振り向いても誰もいなかった。


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