第538話 極秘作戦の打ち合わせ
翌朝。
みんなが時間に合わせるように起きてくると、
すでにイングリッシュ・ブレックファストと呼ばれる、
イギリスの伝統的な朝食が用意されていた。
テーブルの上には、焼きたてのパン、ベーコン、ソーセージ、スクランブルエッグ、マッシュルームソテー、焼きトマト、ベイクドビーンズ、
そしてトマトやレタスのサラダが並んでいた。
緑箋はベーコンにスクランブルエッグを乗せて、
トーストを食べた。
この世界に来てまたこんなご飯が食べられるとは思っていなかった。
代田もまた珍しい食事に目を輝かせていたが、
実はカレンも始めて食べる料理ばかりだったので、
とてもにこやかに食事を楽しんでいた。
朝食を食べ終わってまた紅茶でひと時いれた後、
シルヴィアの要請に応えるべく、宿を後にした。
朱莉がはすでに準備を整えてくれているようで、
今日の行き先は大講堂であった。
大講堂の前にはすでに案内人が待っており、
大講堂の中へ通してくれた。
中は巨大な空間で、
部屋の中には椅子が整然と並んでいた。
一行が呆気に取られていると、
横からシルヴィアが近づいてきた。
「皆さんおはようございます。
本日もよろしくお願いいたします」
今日も見事に軍服を着こなしているシルヴィアは眩しかった。
みんなもおはようございますと挨拶を交わした後、
遼香が打ち合わせを始めた。
「注文通り、平面に椅子を並べてもらえたようだな」
確かにこの巨大な空間で見やすいように段上、
もしくは円形上の席になっておらず、
平面に椅子が並んでいる。
「確かに遼香の言うとおりにしてみたんだが、
本当にこれでいけると思うかね?
理論上、この作戦が一番いいという気もしないでもないが……。
シルヴィアはどこか不安そうである。
「大丈夫だよ、なあ緑箋君」
遼香がこの満面の笑みをしている時は危険な兆候である。
緑箋は大きく息を吐いた。
無理難題を言われるのも何度目かはわからないが、
慣れることはない。
しかしそれに応えたいという気持ちは人一倍大きい。
遼香のやりたいことは必ず大切なことであるのをよくわかっているからである。
遼香はみんなに今日のやるべきことを説明した。
緑箋は何度もそれに対して聞き返したが、
本当に実行するようである。
反対する気はなかったが成功する気もなかったのだが、
もう決定事項であるならばやるしかない。
ただ今回の作戦はこれまた秘密裡に行われるので、
数名の参加者にしかこの内容は教えていない。
シルヴィアはすでに了承したとはいえ、
本当にそれが可能なのかということに疑問を持っている。
当たり前である。
ということでシルヴィアを安心させるべく、
遼香は代田ともに並んで立って、
今回の作戦を実行する様子を実際に見せてみた。
実を言えば、緑箋もこの作戦の行動については初めてではない。
練習もかなり行っている行動であり、
かなり重要な行動として捉えていて、
いつもの訓練内容の一つとして組み込まれているものではあるのだ。
だが側から見たら信じられないことであるし、
不測の事態が起きないとは限らないため、
万全を期す必要があるのだ。
緑箋たちがこの行動を実行してみせた後、
シルヴィアはこの光景を見て、しばし言葉を失った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます