第535話 会談が終わって

その後も穏やかに会談は進み、

友好的な関係をさらに深めることを目指すことになった。

遼香とシルヴィアは硬く握手をしてその関係を誓い合った。


会談終了後、

遼香達は一旦応接室へ帰る。

このあと、遼香とシルヴィアは個人的に食事会を開くことになっているそうで、

緑箋たちも誘われたが、

今回は遼香とシルヴィアが二人で話した方がいいのではないかということと、

朱莉とカレンもいるので緑箋と代田はその食事会へは参加せず宿へ戻った。


ロイヤルスイートルームのようなあまりにも巨大な部屋に、

緑箋と代田は驚いたが、

すでに朱莉とカレンはその部屋の主人のようにリラックスしていた。


「おかえり、二人ともお疲れ様」


朱莉はリラックスして出迎えてくれた。

緑箋は会談の内容の詰まったデータを朱莉に転送する。

朱莉はざっと会談の内容に目を通す。


「和やかに会談は進んだみたいだね。

シルヴィアさんと遼香さんはもう長い付き合いだから、

お互いのことはよくわかってるでしょうけど、

流石に攻勢に転じるという話はびっくりしたみたいね」


朱莉は遼香からその話を聞いていたのだろう、

笑ってその時のシルヴィアの顔を想像しているようだった。


「僕たちも全く知らなかったからびっくりしましたよ。

流石にあの場所で僕らもびっくりするのはおかしいので、

代田さんと一緒に普通の顔してましたけど、

ねえ」


緑箋は代田の方を見ると、

代田も大きく頷いていた。


「遼香さんはせっかくこういう機会だから、

手土産の一つも渡したいって思ったんでしょうね。

みんな知ってると思うけど、

遼香さん、そういうのが大好きだからね」


朱莉も遼香とは長い付き合いである。

遼香のことをよく理解している。

出なかったら、朱莉は今の仕事はできていないだろうし、

遼香が自由に振る舞っているように見えるのは、

優秀な参謀がいるからとも言える。


「でも、僕らにも黙っておく必要はないと思うんですけどね。

僕らが驚いてしまったら、相手方も不安になるじゃないですか」


代田はまだ遼香と付き合いが浅いので、

普通の感覚を持っている。

朱莉や緑箋のような対応はおかしいのであるが、

それに本人たちは気がついていない。

もう戻れないところまで来てしまっているのだ。


「遼香さんは別に代田さんが驚いたとしても、

何にも問題がないと思っていたと思うよ。

隠していたというよりは、

より印象的になる場面を狙っていたという方が正解じゃないかしら。

荒唐無稽すぎると、信じないかもしれないからね。

遼香さんはいろんなことを言うけど、

どれも嘘はないからね」


「それは確かにそうですが……」


代田は理解したような指定内容な複雑な心境のようである。

とはいえいきなり魔族のところへ攻めに行くと言っても、

すぐには理解できなかっただろうし、

それはいつ聞いても同じことだったとも言える。


「さ、それは置いておいて、ご飯にしましょう。

遼香さんは向こうで食べてくるんだから、

私たちもいっぱい食べちゃいましょう」


朱莉がルームサービスを呼ぶと、

豪華な料理が運ばれてきた。

果たして食べ切れるのかと思うほどの料理が次々に運ばれてくる。


四人はお腹がぺこぺこだったので、

何も言わずに料理と格闘を始めた。

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