第534話 攻めと守りと

「守りから攻めに転じる……。

攻撃こそ最大の防御ということですか」


「そうです。

無尽蔵に湧いてくるような魔族に対して、

我々は今まで確かに守ることが精一杯でした。

しかし今回このような武器を入手したことによって、

攻撃に転じる活路が見出せるのではないかと考えています。

さらに言えば、

魔族の中にも人間世界との交流を求めているものもいるということが、

わかってきました。

我々は魔族を全て敵だと考えていましたが、

人間にも様々な人間がいるように、

魔族にも様々な魔族がいてもおかしくない。

そしてもしかしたら人間と共存とまではいかなくても、

敵対しない程度の関係を築くことができる、

可能性もあるのではないでしょうか」


「魔族との新しい関係ですか。

今聞いたお話をすぐにわかりましたと言えるものではありません。

しかし遼香のおっしゃることを全て否定するものでもありません。

全て根絶やしにする、

魔族か人間か、どちらか滅びる運命でしかない、

そう考えているものも多い世の中ですが、

また別の選択肢を考えるのは、

我々に与えられている課題かもしれません。

ただ、もう一つの攻めに転じること、

これに関しても今の状況ではむずかしい面が多いのも事実です。

ですが、それを実行できたなら、

それは人間にとって大きな転換点となるのは間違いないでしょう。

勇者が現れ魔王を滅ぼす、

おとぎのくにのゆめものがたりのようなものでしかなかったものが、

実現できるならば、それはどんなにすごい成果になるのでしょうか。

今はまだ想像すらできません」


「実際問題として、

自国の戦力を開けて攻め入るというのはまだ難しいのは理解しています

魔族がいるのはまだ一つではありません。

魔族の島がどのようにつながっているのかもまだよくわかっていません。

そして暗黒大陸は完全に未知の世界です。

魔族にとっては人間の世界はかなりの情報が流出しているような状態ですが、

それでもまだ魔族にとって未知の領域も多くあります。

世界がもし一つになって魔族に対抗できるようなれば、

魔族に戦いを仕掛けて勝つということも夢物語ではないと思っています。

すぐに何かを成すということはまだできないにしても、

まず我々日本が、何らかの成果を出し、

世界に希望を与えれるような結果を見せられたなら、

夢の実現に近づけるのではないかと考えています。

それにはイギリスと日本の友好関係をより強めて、

協力していただけるとありがたいと思っています」


「遼香の提言はとても我々にとっても刺激的です。

同じ島国として、両国の関係をより深いものにしていきましょう。

そして日本の狙いがしっかり行動に移せるように、

我々も準備したいと思っています」


シルヴィアは力強く遼香に返答してくれた。

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