第533話 防衛すること

遼香はシルヴィアの反応を見て笑みを浮かべたが、

あくまでも正式な会談であるので、

その姿勢は崩さなかった。


「このように、我々もマモンの脅威に晒されることになりましたが、

今のところはこの他の被害はありません。

事前に防ぐということは重要ですが、

イギリスも日本も島国ということもありまして、

なかなか全ての侵入を防ぐというのが難しい面もあります。

その辺りも両国似ているので、

お互いの協力関係をさらに高めていきたいと思っています」


「遼香さんのおっしゃる通りです。

イギリスとしてももっと連携を深めていきたいと思っています。

しかしながら、今のこのがしゃどくろの様子はとても興味深い。

今回この映像を解禁していただいて本当にありがとうございます。

この映像を見るに、

緑箋さんがいなかったら、

このがしゃどくろは普通に排除されていた可能性が高いと思われますが、

遼香はどう思われましたか?」


「シルヴィアとおそらく同じ考えです。

敵を排除することも簡単ではないですが、

おそらくは可能だったと思います。

しかしそれではそこで終わりです。

今回は六右衛門狸を無事に生け取りにすることができました。

ある意味六右衛門狸も被害者です。

その被害者を加害者として排除することは、

問題の解決には至りません。

六右衛門狸を捕えることによって、

裏にいるマモンの存在を確認することができ、

さらなる被害を抑えることにつながったと考えています。

そう言った意味で、

この結果は緑箋の魔力によるところが大きかったわけです」


「遼香のおっしゃる通りです。

結局今回の様子は魔族が戦いに直接は参加していない。

同士討ちと言ってもいい状況です。

ここで敵となったものを排除してしまっては、

結局我々の戦力が失われるだけです。

ここをしっかり守って捕らえたというのは大きな意味があります。

もちろんこれは状況によって変わります。

一つの命と、大勢の命、天秤にかけてどう対処するか、

そういう難しい命題に直面した時に、

このような行動が取れたかというのは難しい問題です。

ただ今回は結果を出した。

これは素晴らしいことです」


シルヴィアは心から緑箋と代田の行動をたたえた。


「もったいないお言葉ありがとうございます」


緑箋と代田も神妙になって返答した。


「実際問題日本でも今回の出来事は大きな転換点だと考えています。

今までは魔族から国民の命と財産をどう守っていくかということに、

命をかけて取り組んでいたわけですが、

今回の出来事から、

我々は魔族に対抗する武器を手に入れたわけです」


「遼香もそう思われましたか。

私も今それを考えています」


「魔族をこちらから攻めるということを考える時期が来た。

私はそう考えています」


遼香はキッパリと言い切った。

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