第531話 暗黒島の脅威

緑箋と代田はいきなり変貌した二人に驚いていたが、

国同士の正式な会談であるのだから、

当たり前の話である。

二人の会談は続き双方の魔法軍の協力や連携について話し合われた。

また魔王軍の内情でわかることの情報も交換していった。


イギリスの西方には暗黒島がある。

古くからヨーロッパと関わりのある島である。

それぞれの魔族の島で誰が統治しているのかというはあまり関係がないようで、

時期によって好きな場所で生活をしているようである。

なので日本にカレンがやってきたのも、

魔王島をサタンが統治しているからではなく、

単にサタンが気に入って最近住んでいたからに過ぎない。

魔族たちが本当に住んでいるのは暗黒大陸であり、

暗黒大陸がどのようになっているのか、

その情報はまだ未知である。


暗黒島に関しては最近住んでいるのがアスモデウスということで、

アスモデウスに関しての情報とサタンに関しての情報交換ということになった。

アスモデウスは最近活発に活動しているようである。


前の世界のアスモデウスは旧約聖書外典の「トビト記」に登場する。

美しい女性サラに恋焦がれ、彼女の夫を次々と殺害する。

ある日、アザリアがトビアに皿と結婚しろという。

トビアは断るが、香炉を使えば大丈夫という助言で、

サラと結婚する。

初夜に香炉を使うとアスモデウスは部屋から逃げ出した。

その後を追ったのがアザリアで、

その正体は大天使ラファエルだった。

アスモデウスはラファエルに捕まって、エジプト奥地に幽閉された。

結局アスモデウスはサラに手を出さなかったのだが、

それはアスモデウスが小心者だったからだという。


という悪魔としてはかなり小物な扱いである。


しかし時代が進むとアスモデウスはだんだんと大物になっていく。

七つの大罪の一人として組み込まれ、

色欲の悪魔となる。


そして「ゴアティエ」ではアマイモンの配下の王となる。

牛と人と羊の頭とガチョウの足、毒蛇の尻尾を持ち、

手には軍旗と槍を持って地獄の竜に跨り、

口から火を噴くという。

「地獄の事典」の挿絵では、

三面の怪物が可愛い龍に跨って炎を吐いている。

少しユーモラスな感じである。


恐れず敬意を払って丁寧に応対すれば、

喜んで、指輪やガチョウの肉をくれたり、

幾何学や天文学の秘術を教えてくれることもある。

悪魔だがとても可愛い悪魔である。


とはいえ色欲の悪魔なので、

人間にとってはかなり厄介な存在である。

人間の三大欲求の一つである性欲に関係するために、

かなり人間にとっては脅威である。

性欲を支配することは、性的関係だけではなく、

その権力にも取り込むことができ、

また子孫への影響も大きくなっていく。

単純に魔力が強い悪魔はもちろん脅威だが、

アスモデウスのように人間に狡猾に取り入ってくる悪魔というのも、

人間にとってかなりの脅威となる。


この世界においてもアスモデウスは七つの大罪の色欲を司り、

脅威的な存在となっている。

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