第530話 日英軍事会談

武器の話で緑箋たちが盛り上がっていると、

先ほどとはまるで別人のようなシルヴィアが部屋に入ってきた。

彼女を包んでいたのは、深緑色のベルベットで作られた外套だった。

襟には、金糸で刺繍された獅子の紋章が輝き、威厳を放っている。

外套の下には、白と赤のストライプのシャツと、

黒の革製のベストを合わせ、

ウエストには太い革のベルトが巻かれている。

ベルトには、無数の小袋や短剣がぶら下がり、

いつ戦闘が起きてもいいように準備万端であることを示している。

足元には、頑丈な革製のブーツが綺麗に磨かれて輝いている。


肩には、青いクリスタルが装飾された肩当てが取り付けられている。

そのクリスタルは、彼女が魔法軍の元帥であることを示す証であり、

彼女の強大な魔法の力を象徴しているかのようであった。


シルヴィアは、先ほどまでの穏やかな服装から、

見事に厳格で力強いも姿へと変わっていた。


「なんですか、皆さん盛り上がっているようですね」


シルヴィアは先ほどまでと変わらない優しい超えて話しかけたが、

緑箋と代田はその姿に見惚れて何も言えなかった。

その様子を見てシルヴィアはポカンとしている。


「見惚れてるんだよ、シルヴィア。

二人ともシルヴィアの変貌ぶりにびっくりしてるんだ」


遼香は二人の状況を説明して笑った。

シルヴィアにとってはむしろこの格好の方がいつもの格好なので、

相手に与える印象が全く違っていることに気がついていないのだ。


「そんなことはないでしょう。

普通の格好になっただけですから。

では場を移しますので、

こちらにおいでください」


シルヴィアが自ら緑箋たちを会談の部屋まで案内する。

長いテーブルを挟んで向かい合う。

UK軍からはシルヴィアの他に五名が参加していた。

日本は遼香と緑箋と代田の三名である。


「桜風院様、ようこそ UK魔法軍本部へ。

遠い日本から、わざわざお越しいただきありがとうございます」


シルヴィアは、温かい笑顔で遼香に語りかけた。

遼香も静かに微笑み、返事をする。


「ミストヴェール様こそ、わざわざお招きいただきありがとうございます。

貴国の魔法の技術は、世界でも屈指です。

今回の会談で、多くのことを学ばせていただきたいと思っております」


先ほどまでとは違う正式な会談として、

二人の間には、緊張感が漂っていたが、

互いを尊重し合う温かい空気も流れていた。


「さて、今回の会談の目的は、

我々の両国が抱える共通の脅威について話し合うことです。

魔族の動きが活発化していると聞いております」


シルヴィアは、真剣な表情で語り始めた。

遼香も、深く頷き、彼女の言葉に耳を傾ける。


「その通りです。我々も魔族の脅威に日々戦いを挑んでおります。

しかし、彼らの魔力は強大です。

我々だけでは太刀打ちできない可能性もあります」


遼香の言葉に、シルヴィアは静かに頷いた。


「私も、同じように感じております。

そこで、私はこう考えました。

我々の両国の連携を強めて、魔族に対抗したいと思っています。

今までは防衛で精一杯のところもありましたが、

そろそろ、こちらからも打って出るべき時が来るのではないか。

互いの強みを活かし、協力することで、

必ずやこの危機を乗り越えたいと考えております」


シルヴィアの提案に、遼香は目を輝かせた。

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