第525話 代田とハルダヴェルグ
「じゃあ、まあこんなもんだな。
謎についてはよくわからなくて申し訳ないが、
とてもいい武器を見せてもらって刺激になったよ。
ありがとう」
「いや、こちらも貴重な時間をいただいて、
本当に助かったよ、ありがとう。
それと、少し商品を見せてもらってもいいかな?」
「ははは、そりゃもちろんだよ。
遼香に使ってもらえりゃ、うちの品物にも箔が作ってもんだな」
「よし、みんなも選んでいいぞ」
「いいんですか?遼香さん!」
朱莉が嬉しそうにしている。
「私もいいのか?」
シルヴィアは実はお茶目である。
「世話になったからな、
好きなのを選べ!」
遼香は笑った。
エルフといえばやはり、剣、弓、槍などと、
軽い鎧や装飾品が得意である。
基本的には魔法使いには向いている装備品になるだろう。
そんな中、緑箋たちは基本的な武器を持っているので、
装飾品を選ぼうとするものが多かった。
その中で代田は武器をどれにするか悩んでいた。
今まで自分の手で戦ってきたので、
武器を使って戦うということが頭になかったのだ。
しかしせっかくこういう機会を得たので、
何かいい武器がないかと考えていたのだ。
それを見越したハルダヴェルグが代田に話しかけてくれた。
「代田。
お前さんは武器が欲しいのか?」
「そうなんです。
いい武器があればと思ってるんですが」
「あまり武器を使っていないように見えるが、
肉体一つで戦ってきたタイプだな?」
一眼見てハルダヴェルグは言い当てる。
客にどの武器が合うのかが見れるのがいい鍛冶屋である。
なかなか素直にハルダヴェルグの話を聞かない客ももちろん多いのだが、
最後はハルダヴェルグの見立て通りになることが多い。
無月ではないが、
武器もまた人を選ぶのである。
武器が良ければ良いほど持ち主の力量が必要とされるため、
高い武器がいい武器とは限らないのだ。
安い武器を薦められたからバカにされたと思う客も多いが、
武器の力が足りないのではなく、
客の実力の問題だということに気が付く人は少ない。
値段が高い、いい武器を使いたいという客が圧倒的に多いのだ。
それがわからない客だから、
いい武器に出会えないということもあるのあろう。
「おっしゃる通りです。
体が大きいということもあって、
武器を使う時に困るっていうのもありますし、
殴った方が早いという気になってしまうんです」
「ははは、そうかそうか。
やっぱりそうだな。
自分に何が合うかわからないってことだろう」
「そうですね。
器用な方ではありませんから、
刀も使えませんし、
弓は狩りで多少使いますが、
上手いわけではありません。
じゃあ魔法が得意かというと、
大雑把な魔法しか使えません」
「まあそう自分を卑下するもんじゃないよ。
今日は代田にぴったりの武器があるんだ。
多分それは運命なんだろう。
こういう仕事をしてると、
なんか武器に引き寄せられる客っていうのが来ることがあるんだ」
「そんなことがあるんですね。
不思議です」
「きっと気にいると思うぜ。
ちょっと待ってな」
そういうとハルダヴェルグは部屋の中から一本の武器を取り出した。
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