第519話 砕星を見て

「ナルエルはしょっちゅう会ってるから今はいいわな」


ハルダヴェルグの言葉にナルエルは遼香たちの方に手のひらを出して、

そっちがメインですというような振りをした。


「シルヴィアは久しぶりだな。

相変わらず変わらぬ美しさだな」


「はいはい、ありがとうございます。

今日の本題はこちらですからね。

でもほんとお久しぶりです。

こちらの装備は本当に評判がいいですよ」


「ははは、まあ伊達にずーっと鍛冶屋をやってるわけじゃないからな。

まあ装備なんて使わないのが一番だが、

いざとなった時に役に立ってくれりゃ、

こちらとしても嬉しい限りだよ」


「ほんとにありがとうございます」


シルヴィアも軽口を聞く中のようである。


「それで、皆さんがわざわざ日本からやってきてくれたってわけだ。

桜風院殿、わざわざこんなところまですまないね」


「遼香で結構ですよ。ハルダヴェルグ様」


「じゃあこっちも呼び捨てで構わんよ。

まあその方が気が張らなくて楽だ。ははは」


「よろしくお願いします」


「それで今日ここにきたのが、武器って話だが、

見せてくれるかな」


遼香と緑箋が砕星と無月をテーブルに置く。


「ほう。これは見事な……」


今までの軽口はどこへやら、

武器を見たハルダヴェルグは息を呑む。

一目でこの武器の凄みに気がつくのは流石である。


「少し触らせてもらうぜ?」


「もちろん。確認してみてほしい」


遼香もあっという間に砕けた物言いになっている。

ハルダヴェルグはまず砕星を手に取る。

遼香に合わせて作られているので、

ハルダヴェルグには少し小さいが、

両手になんとか嵌めると、

ふうと一息いれる。

すると砕星が輝き出す。


「なるほどなあ。こりゃすごいな。

力が溢れてくるが、燃費が悪いな」


「一目でそこまでわかるか。

さすがだな」


「魔力の吸われようが尋常じゃねえなこれは、

飛んだじゃじゃ馬だが、

ここまでの魔力をもつ武器はワシもみたことがないわ。

まあ作ったのはいいとして、

こんな武器だと武器として使うこともできないだろうから、

誰もつくろうとすらせんわなあ。

遼香みたいな変態にしか使いこなせんわこれは」


ハルダヴェルグは砕星を起きながら、

呆れたような顔をして、

またこんな武器が存在していることに喜んでいるようだった。


「確かにハルダヴェルグがいう通りの武器だが、

そこまででもないと思うがなあ。

可愛いやつだよ」


遼香は自分の実力があまりにもかけ離れているということを忘れているかのように、

さも当たり前のことだという。

遼香はこんなピーキーの武器が嫌いではない、

いやむしろ好きだからこそ、

嬉しそうにしているのだろう。


「この砕星はただの武器じゃねえだろう。

遼香がこの武器を使うととんでもないことが起きるんじゃねえか?

ちょっとそこまではわからないが、

確かに危ない武器っていうのはわかるな。

だがほんとによくできてるよこれ。

見た目が美しいとかいうのもあるが、

この武器を作った素材の含有量が奇跡のバランスだな。

これもしかしたら二度とできないんじゃないかって思うくらいだなあ。

でもまあ職人だったらその無理を通さないといかないんだがな」


ハルダヴェルグはそう言って豪快に笑った。

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