第513話 カレンの中のエルフ

遼香が魔族についても感想を述べる


「魔族は元々持っている魔力が人間とは比べ物にならないほど大きいから、

自分の中の魔力だけでなんとでもなるんだよ。

カレンもそんな戦い方をしていたが、

お母さんの助言がなかったとしても、

おそらくそれでも問題がなかっただろうから、

人間やエルフの魔力を必要としていなかっただろうね。

そういう意味では魔族にうまく順応できていたということでもあるんだが。

自分の魔力を封印するようにしたのは、

魔界で生きる上では必要なことだったんだろう」


「遼香さんのおっしゃる通りです。

母から話は聞いていましたが、

母からも禁じられていましたし、

いつしかその話を忘れておりました。

今マイトリン様からお話を伺って、

ようやく思い出した次第です」


「カレンさんが封印していた魔力を思いだすことは、

私はかなり大切な気がしています。

魔力というのは同じでも、

性質が少しずつ異なっています。

エルフと魔族と人間にはそれぞれの利点や弱点があります。

その魔力をあらかじめ持っているカレンさんが、

複合した魔力を使えるようになることで、

また新しい魔力を持つことになります。

それはもしかしたら希望かもしれませんね」


「希望……ですか?」


「そうです。

あらゆる種族を超えた魔力、

種族を混合した魔力というのは、

とても素晴らしいものじゃないかと思うのです。

単純に強力な魔法が使えるという面もありますが、

それだけではない、

何かとても素敵で大切な魔力になるような気がしています。

カレンさんが今ここにいる理由も、

もしかしたらそういう運命に導かれたのかもしれません。

だって魔界にしかいなかったら、

あなたの中の魔力が目覚めることはなかったんですから」


カレンは何か深く考え込んでいる。

自分の出自が複雑で、

大変な人生を送ってきただけだと思っていたが、

自分の魔力がもしかしたらこの世界の役に立つかもしれないと言われて、

どうしたらいいのかわからないのだ。

必要のない存在だと思っていた自分が、

もしかしたら少しでも世界に必要な存在だと思えるのだとしたら、

こんなに素敵なことはない。


「私にもエルフの魔法が使えるでしょうか?」


「それは簡単でしょう。

別にエルフの魔法は特別なものではありません。

形を変えて魔族も使っているのかもしれません。

ただ、エルフの魔力を使うことによって、

エルフの魔法がより使いやすくなることは紛れもない事実です。

お話を伺ったところ、

すでにエルフの魔力を自分の中で感じることはできたのですね?」


「はい。

緑箋さんとの訓練で、

自分の中の魔族ではない魔力を感じ取ることはできました。

ただそれをうまく使いこなすまではできていません」


「なるほど、

では、一度あなたのエルフの魔力を取り戻すことにしましょう。

少し目を瞑って、

そして静かに深呼吸してください」


カレンはわかりましたといって、

マイトリンに言われた通りにする。

マイトリンは右手に杖を持って、集中し始めた

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