第512話 魔族の魔法の使い方
前の世界の緑箋は動物に好かれるどころか動物に嫌われる方で、
散歩をしている犬には吠えられ、
猫に指を近づけるとシャーと威嚇され、
動物園の動物ですら、怯え出すような始末である。
ある意味動物の方が敏感に気配を察知するので、
緑箋が纏っていた死の影を悟っていたのかもしれないと思わされた。
事実その後、緑箋は死んでしまうのだが、
今となっては笑い話である。
龗は自分が話の中心になっていることを全く気が付かないように、
緑箋の肩で寝ている。
なぜ緑箋に懐いたのかは全くわからないが、
考えてみると龗がいるおかげで、
緑箋という人物に安心感が増すという好影響を与えている。
特に魔力の高い方が龗の存在の凄さをより感じているので、
実力者ほど緑箋に好印象を持つような気がする。
そういった意味で寝ているだけの龗が、
緑箋にとってはとても大事なものになっていた。
ただ龗はそんなことを微塵も気にしていないだろうし、
緑箋も龗をそんな風に思ったこともなかった。
この二人の自然体と無欲さが余計に好印象を与えているという、
好循環を産んでいたことを緑箋も気が付いていなかった。
今後も気が付かない方がいいし、
おそらく緑箋にそんな邪な考えが起こった時、
龗は肩からいなくなるのだろう。
エルフの魔力の使い方というのは緑箋にもよくわかったし、
日本人にはよくわかる魔力の使い方である。
日本は神の国である。
しかもその神は超常的なものではなく、
身の回りにあるありとあらゆるものに神が存在している。
そういう考え方を持つ日本人にとって、
エルフと同じような考え方で、
周りの魔力を有効利用しながら使う魔法使いは少なくない。
あくまでも少なくないだけで多いわけではないのが、
周りの魔力を使うという難しさがある。
単純に自分の魔力を使った方が早いというところも大きいのだろう。
マイトリンは説明を続けてくれた。
「基本的に魔力の使い方というのはどんな種族でもそれほどの違いはありません。
誰でも少しは自分以外の周りの魔力を利用しています。
ただそれを自覚的に行うか、
全く感じずに行うかでは魔法の威力や効果に大きな違いがあります。
カレンさん、あなたの魔族の立場で使っていた魔法では、
今私が話したような周りの魔力を効果的に使うという話はありましたか?」
「いいえ、マイトリン様のお話ししていただいたことは、
魔族では全く考えられていません。
魔族の魔法は自分の中の魔力を、
どうやって最大限に外に放つかということに特化しています。
ですから魔力が大きいものほど強いと考えられているんだと思います。
ただ私は母から今マイトリン様がお話しされていたような話を聞いておりました。
精霊の加護があるということを教えてもらっておりました。
ただそのような魔法の使い方をすると、
魔族に目をつけられてしまう可能性がありましたので、
それは決して使わないようにと母から教えられていました」
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