第510話 カレンの家族たち

マイトリンは話を続けた。


「ただ一つだけ。

あなたのおばあさまのエオメールですが、

エオメールは今はミズガルズ、人間の世界にはおりません。

エルフの世界、アルフヘイムの方で暮らしています。

あなたが生まれた時から、あなたのことを心配しておりました。

もちろんフロールーンのこともですが。

エオメール自体は、アルフヘイムで元気に暮らしています。

そこは心配なさらずに、

今も幸せに生きているようです。

今は残念ですが直接会うことはできませんが、

あとでこちらから伝えておきますので、

いつか直接会える機会が作れるように、

こちらからも働きかけてみましょう。

ただこれはあまり期待せずにお待ちください」


「そこまでしていただけるだけで、本当にありがとうございます」


「エオメールもフロールーンもエルフの中では活発な女性でした。

時には問題も起こすような……。

しかしそれゆえにみんなから愛されている不思議な存在でした。

そしてみんなを心から愛したエルフでした。

二人とも好き勝手に行動するようなタイプでしたので、

姿が見えないことも多く、

またどこかに遊びに行ってるんだろうという程度にしか思われていませんでした。

あの日、フロールーンの姿が見えなくなった時も、

みんなはそんなふうに心配しておりませんでした。

何年も旅行と称してフラフラしているのが常でしたからね。

そのあと、フロールーンの噂が入ってきたのは、

あなたの話からでした。

サタンに子供が生まれた、そしてそれがエルフの子であるという噂でした。

噂話ですから初めは誰も信じていませんでした。

おそらくサタンの方は何も気にしていなかったのでしょうが、

わざわざ流す必要もない情報ですので、

詳しいことはわかりませんでしたが、

少しずつ魔族の方から情報が漏れてきたのです。

その情報から、その母親がフロールーンではないかということになったのです。

あなたが今ここにきたことで、本当だったと確認できました。

フロールーンに何があったのかはわかりませんが、

あなたの話から聞く限り、

酷い拷問などをされていたわけではなさそうなので、

そこは安心いたしました」


「そうですね。私の前では自然に明るく優しい母でした。

もしかしたら何かを隠していたのかもしれませんが、

怪我をしたりしていることもなさそうでしたので、

私が何かに気が付くような事件はありませんでした」


「そうでしたか。

カレンとフロールーンがそれなりな生活を送れたということが聞けたことで、

私もとても安心できました」


「そういっていただけて感謝しかございません」


「さあ、お互いの気持ちは伝わったんじゃないかと思います。

カレンの家族のことはもちろん大事ですが、

今回ここにやってきたのはそれだけが目的ではありませんでしたね?」


マイトリンは本題に入って行った。

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