第509話 フロールーンについて
マイトリンはカレンの手を取って立ち上がらせると、
優しく抱きしめた。
「よく来ましたねカレン。
あなたが無事でいてくれて私たちもとても嬉しく思っています
今後は気にせずにいつでも私たちを頼ってきなさい」
カレンはマイトリンの温かい言葉と、
暖かな体に包まれて、
ただただありがとうございますと感謝を伝えるのがやっとだった。
緑箋たちはその様子を微笑ましく見守っていた。
カレンたちが落ち着いた後、
謁見の間から一旦退席し、
大きな客間へと場所を移した。
マイトリンたちもざっくばらんに話をしたい、
そんな思いを持ってくれているのだろう。
マイトリンの横には先ほど案内してくれたエルフと、
もう一人のエルフが両脇に座っている。
緑箋たちもテーブルを挟んだ向かい側に座った。
「本来はエルフの話を直接聞きたいと伺っておりましたが、
少しだけカレンの話をしておきたいと思いますがよろしいですか?」
マイトリンの言葉はむしろ歓迎であった。
「ぜひお願いします」
遼香はそう答えた。
「では、今私どもがわかっている情報をお話しします。
カレンの母、フロールーンがどこにいるかというのは、
先ほども申しました通り、
私たちもわかっておりません。
エルフと直接コンタクトを取ってきていないようですので、
それはフロールーンが我々に迷惑をかけたくないということなのか、
それとも問題があるのかということもわかりません。
今の所、魔族に捕えられているという話も聞いておりません。
自由に生きてくれていればいいのですが……」
フロールーンは放逐されたので、
魔族に捕えられているという可能性は低いかも知れないが、
他の魔族に捕えられているという可能性ももちろんある。
単純に姿をくらましているだけという可能性ももちろんあるのだが。
「ただ命に関しては消えていないということはわかっております。
なのでその点においては安心してもらっていいかと思います」
この世界のエルフは寿命がないわけではないが、長寿である。
そしてその魂は光に帰っていき、
また新しく生まれるとされている。
なのでエルフの寿命が尽きた時は、
その光に帰ってくるはずなのである。
フロールーンが帰ってきていないということは、
どこかで生きているということになる。
ちなみにエルフの混血についてはよくわかっていない。
歴史が浅いためである。
その中に入っている種族の属性が強く現れるのは個体差があり、
エルフに近いもの、人間に近いものというような感じになるようである。
光に変えるのかということもよくわかっていない。
ただ基本的には人間より長寿である。
そういった意味でカレンは複雑な属性を抱えているわけだが、
長寿であることは間違いないだろう。
「まだ母がどこかで生きているという確証をいただいただけで、
こんなに嬉しいことはありません。
いつか会えることを願って、
私もしっかり生きていこうと思います」
カレンはキッパリと覚悟を決めたような顔をしていた。
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