第506話 エルフたちの様子

改めて考えなくても、

魔族が今ここにいて、

UKの総元帥とこのような席を設けていることだけでも大問題になる話である。

一応シルヴィアの私的な行動ということになっているが、

これだけでもだいぶシルヴィアが気を使っていることの証拠でもある。

当のシルヴィア本人はそれほど気にしていないようだが、

これは遼香と似たような思考回路を持っているからかもしれないし、

また遼香がついてきているということもあるのだろう。

遼香をそれだけ信頼している証である。


「じゃあこのあとは遼香を正式に軍に招いて会談を行うことになるんだけど、

その前にカレンさんに合わせたい人がいるの」


「私にですか?」


「そうですわ。

今回遼香がイギリスまで来たのはカレンさんのためだからね。

私もカレンさんをタダで返すわけにはいかないの。

ただ流石にアレフヘイムへ招待することはできなんだけど、

イギリスにもエルフの村があるから、

その近くでエルフとお話をできるようにしてもらったから、

エルフの村に行きましょう」


「そこまでしていただけるとは……。

本当にありがとうございます」


「一応面会の話はつけているけれど、

向こうのエルフの方がそのままお話ししてくれるか、

一眼見て帰ってしまうかまではわからないから、

そこは覚悟してくださいね」


「いえ、このような機会を頂いただけで、

私には感謝しかございません」


「まあこれはこちら側の働きかけだけじゃなくて、

エルフたちにとっても大切な話になっているようで、

カレンさんが望むならエルフたちもお話をしてみたいという希望があるようなの。

お母さんの問題もあるからね。

結構心配しているようだったわ」


カレンはその話を聞いただけで胸がいっぱいになったようだった。

父からは疎まれ、

母は追放され、

自分は故郷を捨てることになり、

今はたったひとりぼっちになってしまったように感じていた。

ゾードやザゴーロや亡命した魔族たちもいるけれど、

やはり身内がいないというのは寂しかったのだ。

そんな中自分のことを少しだけでも気にかけている存在がいてくれたことに、

カレンは素直に嬉しく思っていた。


「本当に、何から何まで……。

ありがとうございます」


「日本にもエルフたちはいるけれど、

エルフの住む街や村まではないし、

アルフヘイムとの繋がりも強いから、

よりエルフたちの詳しい話が聞けるんじゃないかと思うの。

じゃあお茶を飲み終わったら出発しましょうか」


みんなはざっくばらんな会話に戻って、

お茶を楽しんだ。

緑箋は久しぶりに紅茶を頼んで、

香りと甘みを楽しんだ。

この世界でも変わらずに美味しい紅茶が飲めることを緑箋は喜び、

そして前の世界を少しだけ懐かしく思った。


香りで呼び起こされる記憶というのもあるのだ。

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