第503話 魔法軍国際統合本部

「それにしてもお二人は親しげですけど、

やっぱり戦友かなんかなんでしょうか?」


緑箋は遼香とシルヴィアに質問した。

二人の仲が気になったのだ。


「そうですね。まあ戦友というよりは腐れ縁というか?

そんな感じですわね?遼香?」


「まあそんな感じでいいんじゃないか?

一緒に戦ったりもしたし、

二人で戦ったりもしたし、

色々だな」


遼香のことだからそんなことだろうとは思ったが、

本当に思った通りであった。


「元々私と遼香は魔法軍国際統合本部にいたんです」


魔法軍国際統合本部(魔統)というのは世界の魔法軍を統括するような場所だ。

元の世界で言えば国際連合に近い組織である。

国連は世界の平和に関して取り組む機関であるが、

魔統は魔族との戦いに関して設立された組織である。

それぞれの国の軍隊では対抗できない時に、

魔統から軍を出して魔族と対抗する。

魔統は国だけではなく、あらゆる種族も参加している。

魔族に対抗する世界の最重要機関である。

その中で遼香もシルヴィアも参加していたということになる。

遼香が魔統に参加していたというのを緑箋は初めて聞いたが、

特に驚きもしなかった、

遼香ならあり得ることである。


「まあシルヴィアとはそこでの腐れ縁だな。

魔統はイギリスに本部があるんだが、

そこで出会ったんだったね」


「そうですわ。忘れもしません。

なんだか日本からすごい人がくるっていう噂がありましてね。

まあ普通はそういう話は眉唾なんですけど、

遼香は本当にすごい奴だったという。

新入隊の歓迎セレモニーがありまして、

そこで模擬戦を行ったんですけど、

当時の魔統で最強と呼ばれていた、

ルーシー・スターフォールと十時間の戦いの末に、

引き分けたんです。

あれは今も伝説に残ってますわ」


「まあ勝てなきゃ意味がないけどな」


遼香はそういって、本気で悔しそうにしている。

当時から負けず嫌いなのだ。


「まあそうは言っても

ルーシーと戦って5分持つ人間はこの世にいないとされていたのに、

遼香は一歩も引かずに戦い続けたんだから、

しかも十時間も。

あの戦いは私も今でも忘れられないわ。

本当にすごかったし、

二人とも一歩も引かずにがっぷり四つの素晴らしい戦いだった」


「そんなこと言って、

その後シルヴィアもルーシーとは善戦できるようになったじゃないか」


「どう考えても遼香のおかげよね。

あの戦いを見て奮起しない人間がいたら魔法軍に残る資格がないくらい、

あの戦いはみんなの人生を変えたと言ってもいいくらいの試合だったからね」


「まあその後はシルヴィアともたくさん訓練したし、

いろんなところで戦うようになったというわけさ。

便利屋のコンビみたいな感じだったな」


「ふふふ。そうね。

遼香といろんな経験ができたことは私の財産だし、

今こうして元帥としていられるのは、

その経験があったからに他ならないわ」


そんな二人の強い絆があったから、

今日はわざわざシルヴィアが自らここに来て説明してくれたのだ。

遼香とシルヴィアがあったことは二人の運命だったのかもしれないが、

ある意味、緑箋やカレンに運命と言えるかもしれない出逢いになった。


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