第500話 アルフヘイムとエルフの話

「アルフヘイムとの関係は、ここ数百年で劇的に改善されたわ。

かつては、人間とエルフは互いに深く警戒し、

時に衝突することもあった。

しかし、共通の魔族との戦いで、私たちは協力せざるを得なくなったの」


遼香と親しげな女性はエルフについて語ってくれている。

古びた羊皮紙に書かれた地図には、

イギリスの海岸線と、その沖合に浮かぶ緑豊かな島が描かれていた。

緑箋たちは今ロンドンのカフェにいる。


「この島こそが、我々が発見したアルフヘイムへの入り口。

厳重に守られた結界の中に、アルフヘイムへの入口が隠されていたの。

エルフたちはそこから人間の世界、

ミズガルズへと渡ってきたという話になってるわ。

他にも隠された入口は、各地にあるようで、

やはりスカンジナビア大陸やアイスランドにも、

同じような入口が隠されているようね。

エルフたちはアフルヘイムで独自の文化を築き上げてきた。

彼らは自然を愛し、魔法の力を自在に操り、

魔法を使った数々の道具も作っているわ。

その技術は、我々の魔法界にとっても貴重な学びの宝庫となっているし、

それは遼香もよく知ってるわね」


遼香はそうだなと笑って答えた。

女性はさらにエルフたちの姿を生き生きと描写し始めた。


「エルフたちは、細身で長髪、そして耳が尖っている。

その姿はまるで、妖精や天使のようね。

彼らの目は澄みきっていて、深い知恵と優しさを湛えている。

彼らは、自然と一体となって、森の中で生活している。

彼らの住む森は、まるで絵画のような美しさで、

そこでは様々な魔法の植物が育っているわ。

人間界でエルフたちが暮らしている場所もそういう森の中が多いわね」


アルフヘイムとの交流は、魔法軍にも大きな変化をもたらしたという。


「エルフたちは、高度な治癒魔法や植物の知識を持っている。

彼らの協力を得て、我々は新しい薬や魔法の道具を開発を進めているわ。

さらにエルフたちの知恵は、

我々の魔法理論の発展にも大きく貢献してくれている」


女性は笑顔で続けた。


「最初は、言葉の壁や文化の違いに戸惑うこともあったけれど、

心を開いて話し合うことで、互いの理解を深めることができてきている。

元々人間界で暮らしているエルフたちとの交流もあったから、

アルフヘイムのエルフとも交流がしやすかったということがあるかもしれないわね。

今では、エルフたちは我々を友人として受け入れてくれているの。

定期的に交流会が開かれ、魔法使いが共に研究を進めている。

そして、必要とあらば、協力して困難を乗り越える。

今はまさに、理想的な共存関係を築けていると言えるわね。

でも、平和な日々が永遠に続くとは限らない。

魔族からの脅威は今も目前に迫っている。

我々は、エルフたちとの絆も深め、

共にこの世界を守っていかなければならないと思っているの」


緑箋たちは急に現れていきなりエルフのことを語ってくれた女性の熱意に、

感心しながらも誰なのかという疑問を口に挟めずにいた。

それは遼香ととても親しく話しているからである。

遼香はわざと名前を伝えないようにしている節があった。


「なあ、それで君は誰なんだっけ?」


遼香は笑いながら促した。


「あら、まだ自己紹介していなかったかしら。

もう、遼香がちゃんと説明してるのかと思ったから。

ごめんなさいね。

私はUK魔法軍総元帥」


シルヴィア・ミストヴェールと申しますと言ってにこやかに笑った。

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