第499話 遼香の企み

「確かにそういう考え方もあるのですね。

魔族には圧倒的に力を誇示するという考え方しかありませんでしたから、

私のように魔力を隠すということ自体誰も考えておりませんでした。

だからこそ、私の中の魔力に誰も気が付かなかったんでしょうし、

私自身すら気がつかなかったわけですね」


「それがいいも悪いもあったということですね。

もしカレンさんの中の隠された魔力に、

サタンが気がついていたとしたら、

もっと早くから酷い目にあっていたかもしれませんし、

放逐されていたかもしれません。

逆に何らかの形でその魔力を利用されていたということもありますが、

何にしてもお母様はそういう危険性を理解されていたのでしょう」


「そうですね、母には感謝です」


カレンは素直に頷いた。


「魔力を混ぜるというのはかなり難しいところではありますが、

この無月には色々な人の魔力が込められています。

ここにいる皆さんの魔力もそうですし、

他でも折りに触れて無月に魔力を注いでもらったりしています。

雨月はその魔力を自由に使っているようです。

おそらく人間の邪な感情がない分、

自然と魔力を混合させるのに向いているのではないかと思っています」


「確かに不思議な感覚がありますね。

ただの刀ではない雰囲気を感じているのは、

そういう色々な魔力が感じられるからかもしれません」


「そうですね。斬った相手の魔力を吸い込むということもあって、

その方が妖刀としての雰囲気があるんでしょうが、

僕としてはいろんな方の魔力を分けてもらって、

無月が強くなってくれる方が嬉しいですね。

妖刀が陽刀のような印象になって、

みんなの力の結晶のような刀になってくれたらなと思っています」


周りのみんなも大きく頷いている。


「カレンさんの魔力の源の謎が少しわかったのは良かったのです。

ただ人間の魔力に関しては僕たちから教えることはできるのですが、

エルフに関しては僕も会ったことがないので、

なかなか教えることができません。

この訓練室を利用して勉強することはできると思いますが、

やっぱり実際はエルフから学べた方がいいと思います」


「確かにそうですよね。

実際のエルフの魔力を感じられた方が、

学びは大きいでしょうし、

助言もいただけるかもしれませんからね」


「日本にもエルフはいるでしょうし、

軍にもエルフはいると思いますから、

今度朱莉さんにも聞いてみましょう」


「はい、よろしくお願いします」


カレンは笑顔で答えた。


「じゃあそういうことなら、エルフに会いに行こうじゃないか」


遼香が訓練室に入ってきた。


「遼香さん話を聞いてたんですか?」


緑箋がびっくりして質問をした。


「今来たところだが、話は何となくわかったよ。

なあ朱莉ちょうどいいじゃないか」


「まあ元々そういうつもりだったんでしょう?」


朱莉は困ったような顔をしながらも、

いつものことだと諦めているようでもある。

遼香は朱莉の問いかけに、笑顔だけで答えた。

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