第498話 緑箋の魔法談義

どう考えても一番魔法経験が浅いのは緑箋のはずなのだが、

魔法を使用した回数で言うと、

この中ではもう一番になっているかもしれない。

それだけ毎日魔法を使用し続けている。

使えば使うほどいいと言うわけでもないし、

もっと効率的に練習する方法もあるだろうし、

脳へ直接働きかけるような方法もあるのかもしれない。

ただ緑箋にはこの愚直に魔法を使っていく方法があっていたのだろうし、

その訓練に付き合ってくれる仲間がいたことが大きい。

一人で集中して訓練することももちろん大事だが、

人と一緒にやること、

人に教わるだけではなく、

人に教えることで自分の理解度をより深めていくと言うのが重要である。

これは何も魔法だけではない。

緑箋はこの世界に来て色々な人の助けによって今があると言うことを、

深く痛感している。

それがわかっているからこそ、

他の人にもそれがわかってほしい、

わかるように教えたいという気持ちが強くなっている。

そんなことは前の世界では思ったこともなかったことである。

人との巡り合わせでこんなにも自分が変わり、

世界が変わって見えることもあるのだ。


まあ緑箋の場合には本当に世界が変わってしまったことが大きいのだが。


「今確認できたカレンさんの隠された魔力ですが、

その感覚を覚えていただいて、

身体中に巡るのを想像してください。

そのうちに自分が意識せずとも、

全ての魔力を使えるようになると思います。

実を言うと、純粋な魔力よりも、

混合した魔力の方が強いことがあります」


「そんなことがあるのですか?

純粋な魔属性を目指せとよく言われたことがありますが」


「まあ確かに、魔族なら魔属性の魔法を使うことが多いでしょうから、

単純な威力を高めるなら、

自分の魔力を魔族の魔力として純度を上げていく、

そう言う方法がいいかもしれません。

ただ魔法は一筋縄ではいかないのはみなさんご存知の通りです。

組み合わせによっては魔力というのは飛躍的に強くなるようです。

簡単に言えば、

鉄を生成するときに鉄だけではなく、

他の鉱物を混ぜることで強度が上がったり、

特別な効果が現れたりすることがあります」


緑箋は無月をぽんぽんと叩いた。


「まさに無月がそういう効果があるということですね」


「カレンさんのおっしゃる通りです。

なのでカレンさんの中にある、

魔族、

人間、

そしてエルフ、

この魔力を組み合わせて使えるようになったとき、

もしかしたら今とは比べ物にならないくらい強い魔法が使えるかもしれません。

もちろんそれには訓練が必要でしょうし、

今までのように魔力を隠す必要もあるかもしれません」


「魔力は隠した方がいいんでしょうか?

魔族には珍しい考え方のようですが」


ゾードとザゴーロは魔力を隠していない。


「それは考え方次第なんだと思います。

圧倒的な魔力の違いを見せつけることで、

敵の戦意を戦わずして奪うこともできますからね。

ただ僕の好みとしては隠しておいた方が有利なんではないかと思います。

単純に自分の底を見せないこと、

また相手に油断させること、

これは戦うときに重要な役割を果たしますから」

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