第489話 カレンと魔族の魔法と

緑箋たちは基本の魔法を中心にして訓練を続けていた。

カレンたちは魔族として教育を受けてきた方だったのだが、

人間の魔法体系とはまた違う教育だったらしく、

人間の魔法についての学習には目から鱗のことも多かった。

逆に魔族の魔法についての学びも緑箋たちにはあったので、

お互いの魔法の知識の交換はとても有意義なものであった。


カレンは緑箋に気になっていたことを聞いた。


「前に私の魔力の半分の使えていない、

秘められた魔力があるというお話をしてくださいましたが、

あれは本当なんでしょうか」


「ああ、あれは多分遼香さんの方が詳しく理解されてるんだと思いますが、

今日はいらっしゃらないので、

僕が推察できることだけでもいいでしょうか?」


「もちろんです。

教えていただきたいです」


「そうですか。

では私の話があってるかどうかはご自分でも確認していただきたいのですが、

お話しさせていただきます。

今までのカレンさんの魔法を見ていても思ったのですが、

カレンさんは魔属性の魔法を使っていらっしゃいますよね」


「はい、私が学んだ魔法は魔属性の魔法になりますので、

魔属性の魔法が基本です。

もちろん他の属性の魔法も使えます」


「おそらくカレンさんは魔族の魔力を使用しているだけなんだと思うんです」


「いや、それは私は魔族ですから、

当たり前なのだと思っていたんですが」


「今までの魔族の魔力を使うということは当たり前だと思います。

それだけでもカレンさんの魔力は相当強いので、

今まで困ったこともなかったでしょうし、

魔力を隠してきたというお話ですから、

魔力を全力で使うということもなかったんじゃないでしょうか?」


「そうです。

戦うこともあまりありませんでしたが、

学校などでも基本的な魔法しか使っておりませんでした。

この前の模擬戦では初めて全力で戦ったような気がしております」


「そう言った意味で、

戦闘経験が足りないということはもちろんあるんでしょうが、

魔法の練度自体が足りないにも関わらず、

あれだけの威力の魔法が使えるということはすごいことです。

あの威力はもしかしたら、

ゾードさんもザゴーロさんも知らなかったんじゃないでしょうか?」


「確かにカレン様があれほどの魔法が使えるということは知りませんでした」


「私たちの前で魔法を使うということも滅多にありませんでしたので」


「魔法というのは基本的なことを覚えてしまったら簡単に使えるので、

何度も魔法を使うという人はあまりいないようです。

しかし本当は魔法を何度も何度も使うことでその練度を高めて、

同じ魔法でも威力と正確性を高めることができると僕は考えています。

なので魔法の訓練自体が足らないということもあるのですが……」


「ですが、なんでしょうか?

他にも何かがあるということでしょうか」


「そうなんです。

ここからが僕の推測に過ぎないので間違っているかもしれないのですが、

お話しさせていただきます」


緑箋は間を置いて一旦自分の考えを整理した。


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