第488話 学習と教育と

遼香と朱莉はまだ仕事があるらしく、

食事が終わっても帰って来なかった。

二人の食事は残して綺麗に保管しておいた。

たえと一緒に食事の後片付けをした後、

今日は緑箋、代田、たえ、カレン、ゾード、ザゴーロの全員が訓練室へ向かった。

たえも魔法のことが知りたいと、

夜は時間を作って一緒に訓練室で魔法の勉強をしている。

そこにカレンたちも加わることになったので、

結局また魔法の基礎的な話から話し始めている。

緑箋はここにきてずっと基本的な話をしたり聞いたりしているのだが、

その役割が教えてもらう立場から、

教える立場へと変化しているので、

実は意外と心地よかったりしている。


学習というのは聞いて覚える、

やって覚えるというのはとても重要なのはいうまでもないが、

実は教えて覚えるというのが一番効果がある。

なぜなら人にわかりやすく教えるということは、

その内容について自分で噛み砕いて理解していなければならないわけで、

教えられるということが一番その内容について理解している状態になる。

しかも緑箋は今回何回も人に教えているので、

教える内容について嫌というほど聞いたり言ったりを繰り返している。

こんなにも効果的な学習方法はないと感じていた。

魔法というのは想像力を具現化することがとても重要である。

その中において魔法効果について理解し、

それを自分の頭の中でいつでも再生できる状態というのは、

とても強い状態である。

元々想像力だけは強かった緑箋だが、

さらに学習することによって魔法体系を学んで、

より効率的に強力な魔法をいつでも使えるようになってきていた。


これは緑箋も気が付いていなかったのだが、

無詠唱の魔法の速度は尋常ではない速度で使用できるようになっていた。

もう体が勝手に反応するような感じで魔法を使えてきている。

これは驚異的なことであり、

この魔法の世界では基本的にはあり得ないことである。

魔王ですら、強力な魔法を使う時には、

印や詠唱をする時間が必要になっている。

普段の模擬戦等での緑箋はそれを気にせずにいつものような感覚で行っているため、

他の人も早いとは思っているが、

それほどの差を感じていないのだが、

危機的状況に陥った時に頭ではなく体の反応で魔法を使い始めたら、

本当にどうなってしまうのかというのは誰も想像していなかった。


緑箋は毎日毎日好きなだけ魔法を使っているだけなのだが、

ある程度魔法を覚えたものが、

毎日魔法を使うということは基本的にはあり得ない。

緑箋は投げ込みのように魔法を使い続けることによって、

その魔法の正確性や速度を高めていっていた。

続けるというのは大変な効果を生むのである。


そして実を言えばその緑箋の訓練が、

今の周りの人たちの実力を上げていっていた。

遼香は元々実戦においてその能力を鍛えてきていた。

多くの被害者が日本中だけではなく、

世界中にいるのはそのためである。

流石に今の大将という立場になってしまってから、

遼香もなかなか実戦を行う事ができなくなっていたが、

ここにきて遼香の実力もさらに伸びている。


遼香たちの実力が伸びたことが、

この世界において大きな分岐点になっていくのだが、

それはもう少し後の話になる。

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