第475話 代田の誤算

目を覚ましたがまだ混乱している代田に幽玄斎が説明する。


「ああ、大丈夫です。まだ横になっていてください。

代田さんは初め岩石弾を豪快に放っていたんですが、

その後ピンク色の霧に包まれてしまいましたよね」


「はい、なんだかわからなかったのですが、

危ないと思って弾き飛ばしたんですが」


「そうです。砂嵐でピンクミストを吹き飛ばしたまでは良かったんですが、

すでにピンクミストに侵されていたんです」


「侵されていた?」


「そうです、神経系に影響を与える霧だったようで、

まあ夢を見させられていたような状態でしょうか。

ピンクミストを払った後に、

こちらで代田さんが動かなくなってしまったんです。

そこで試合は終了しましたが、

代田さんは何かご覧になっていましたか?」


「そんな序盤で……」


代田はその後のことを簡単に説明したが、

説明したところで単なる夢の中の世界のことなのであまり意味がないと思った。


「そうだったんですね。

幻惑魔法についてはやはり魔族に一日の長があるようですから、

今回は対策できなかったことは仕方ありません。

人間ではああも簡単に幻惑魔法を使うものは少ないでしょうからね」


幽玄斎は決して代田を慰めるわけではなく、

本心から今回のゾードの魔法の巧みさに感心していた。

代田はもう回復してきたようで、体を起こした。


「いやーすみません。

負けてしまったんですね。

全然わからなかったです」


「模擬戦ですから気にせずに、

しっかり反省して対策していきましょう。

それが目的でもありますからね」


幽玄斎は代田にしっかりと助言をして励ました。


「では代田さんはこちらにきて休んでください。

まだあまり無理はされないようにしてくださいね」


朱莉が代田を心配しながら退場させる。


「よし、じゃあ次の戦いを行おう。

次は幽玄斎とザゴーロの対決になる」


幽玄斎とザゴーロはお互いに位置について、

体を慣らし始めていた。


「準備はいいな?

では初め!」


遼香は楽しそうの開始の合図を出す。

自分が戦わなくても、いろんな戦いを見ることも好きなのだろう。


戦いが始まった瞬間、

幽玄斎は激しく手刀を振りながら風刃を飛ばしていく。

ザゴーロも同時に「ミスティックフレア」と呪文を唱えると、

紫色の光を放って飛ばしていく。

風刃がミスティックフレアを切り裂いていくように思えたが、

紫色の光が風の刃に絡み付いてお互いに地面に落ちていく。

まるで息を合わせたように二人の中央で魔法が落ちて消えていく。


幽玄斎は「雷鳴拳」と唱えると、

拳に雷を纏わせ大地を蹴ってザゴーロとの距離を詰めていく。

ザゴーロはミスティックフレアで牽制するが、

幽玄斎はそれを受けることをよしとせず、

足にも雷を纏って、

体術で紫の光を交わしていく。


当たらないと思ったザゴーロは後ろに下がりながら、

「ラベンダースモーク」と呪文を唱えて展開していく。


幽玄斎は先ほどの代田の試合を見ていて、

紫色の煙に触れてはならないと一旦距離を取る。

しかし煙は幽玄斎目掛けて飛んでくる。

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