第473話 魔族との模擬戦
静かに話を聞いていた遼香が口を開いた。
「よしじゃあ戦おう!」
カレンたちは呆気に取られている。
緑箋たちは頭を抱えている。
遼香はこれをずっと待っていたんだろう。
遼香が戦闘狂だからこういう話になるんだと、
遼香のことを知らない人はそう思うかもしれないが、
実は戦うことで分かり合えることというのは大きい。
別に漫画の世界だけではなく、
戦った後に握手するということは本当にあるのだ。
そしておそらくカレンの心の奥底に溜まっている鬱憤を、
吐き出させるにはこうやって戦うのは悪いことではないのだ。
遼香は多分そんなことを考えているはずである。
緑箋はそうであってほしいと願っていた。
結局話はそのままま進み、
場所を訓練室へ移す。
たえは雑務があるということで、ここにはついてこなかった。
訓練室にいるのは、
遼香、緑箋、朱莉、幽玄斎、代田、
カレン、ゾード、ザゴーロである。
カレンたちには訓練室の説明をする。
義体で戦うために命の危険はないことを伝え、
全力で戦ってもいいということ教える。
こんな施設があるんですねとカレンたちは驚いていた。
「本来なら私が戦うはずだったんだが、
立場上無理ということなので、
ここは断腸の思いで見届け人とさせてもらう」
後ろで朱莉が遼香のことを睨んでいる。
流石に大将が魔族と、しかもサタンの娘と戦うのはまずいということなのだろう。
朱莉がここだけはしっかり目を光らせているので、
遼香も今回は諦めたようだった。
だから緑箋に頼んだのである。
「せっかく人数もいるので対抗戦ということにしようと思う。
こちらは、代田、幽玄斎、緑箋の順番だ。
そっちはどうする?」
カレンたちはいきなりの話でまだ混乱しているようだが、
とりあえず戦えばいいのかということで、
ゾード、ザゴーロ、カレンの順番で戦うことになった。
ルールは単純。
魔法での戦いとなる。
スキルは使用しないで装備も無しで魔法だけで戦う。
時間は10分間。
所詮は代田とゾードの戦いになる。
「本当に全力で戦っていいんだな?」
「それでなければ意味がないだろう?」
ゾードの問いに楽しそうに遼香が答える。
どんな戦いになるのか楽しみなのだろう。
代田とゾードはお互いに所定の位置に立つ。
「準備はいいか?」
遼香の問いかけに二人とも大きく頷いた。
「初め!」
代田は初めという遼香の声を聞いた瞬間、
岩石弾を飛ばした。
放物線を描いて岩がゾード目掛けて飛んでいく。
こういう相手がわからない時には基本見ていくのが普通の戦術であるし、
代田はどちらかといえば防御に優れている方である。
しかしそれが致命傷になることもあって、
初手の攻撃を防げずに劣勢に追い込まれることが多々あった。
遼香と戦っていればそうなるのも仕方がないが、
実践を想定した時に、
いきなり攻撃をするというのは実は効果的であり、
早めに敵の戦力を削いでいくこと、
そして代田にはそれだけの力があることから、
最近は代田の薫r年の目標として、
積極性を高めるということを意識して戦っている。
ということで今回もいきなり攻撃を仕掛け始めたわけである。
ゾード目掛けて岩が落ち続けていて、
土煙でその姿が見えなくなっていた。
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