第469話 鳳凰寮の新たな仲間たち
一つ山を越えると、見慣れた景色が広がっていた。
「ちょっと本当だ。見えてきましたよ」
幽玄斎が明るく光る建物を指差す。
「まさか、こんなに広い土地だとは思いませんでしたよ」
「ほんと、こんなに遠くまで来たことなかったから、
全然知らなかったです」
代田もたえもようやくここがいつもの場所だと認識して、
少しホッとした気持ちと、
こんなに広い世界だったと知って驚いているようだった。
一行はようやく鳳凰寮についた。
一旦食堂に集まる。
「ここは鳳凰寮と言います。
鳳凰というのはフェニックスに近いのかな。
まあそういう意味です。
カレンさんたちもここで一緒に暮らしてもらいます。
それでお付きのお二人なんですが、
カレンさんと同部屋で大丈夫でしょうか。
広さはありますのでそこは心配なさらないでもらいたいのですが、
同居というのはどういう感じなんでしょうか?」
朱莉が説明しながら質問を受け付けていく。
「もともと私たちは一緒に生活しておりましたので、
むしろその方が都合がいいと言えるかもしれません」
「そうでしたか。それならよかったです。
それでお二人のお名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
二人とも少し青白い肌をしている。
きっちりとしたスーツのようなものを身に纏っている。
どちらかというと執事という感じなのかもしれない。
片方のピンク色の髪の魔族はゾードと名乗った。
そしてもう片方の紫色の髪の魔族はサゴーロと名乗った。
どちらもヘブライ語の色の名前に近いようだった。
そんな話すると、カレンが答えてくれた。
「その通りです。
髪の色からそういうふうに呼ばれるようになりました」
「そうだったんですね。
カレンさんは何か由来があるんでしょうか?」
緑箋が気になって聞いてみた。
「はい、私のカレンという名前もヘブライ語で、
光線とか角とかいう意味があるそうです。
角はありませんので白い肌から母がつけてくれたと聞いております」
「お似合いの名前です」
緑箋は素直にそういった。
その後、改めてこちら側の名前も説明して挨拶を交わした。
「移動制限はこちらでもかけさせていただいております。
特に他の建物の方には近づかないでいただきたいと思っています。
これは双方の安全のためということでご了承いただきたい。
逆に、今来た方については緩めの制限になっておりますので、
自由に散歩したり、
もし畑などを作りたければ言っていただけたらお手伝いもさせていただきます」
そのあたりのことはカレンたちも了承済みである。
「部屋の方ですが、部屋は西側の部屋にしていただこうと思います。
遼香さんの隣の部屋になります」
わかりましたとカレンたちは答えた。
「明日の朝以降ですが、
私たちが一緒に先ほどまでの魔族解放区まで一緒に行くことになります。
そこで魔族の皆さんと共に生活の基盤を作れればと考えております。
カレンさんたちには少し面倒になるかとも思いますが、
警戒と安全を兼ねてということで、
ご理解いただきたいと思います」
「いえいえ、むしろここまでしていただけるだけで、
私どもから何もいうことはございません。
本当にありがとうございます」
カレンたちは頭を下げた。
ここに来てカレンたちが何度頭を下げたのかわからないが、
それだけ感謝しているということだろう。
朱莉とたえはカレンたちを連れて部屋を案内する。
たえはもうすっかり鳳凰寮の責任者のようになっている。
代田はそれを嬉しくも少し寂しくも思っているようだった。
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