第468話 カレンたちと移動

緑箋は魔族たちと食事を囲見ながら、

少しずつわだかまりもなくなっていく気がしていた。

緑箋にとっては魔族たちも知らない存在なだけであって、

今の所直接攻撃をされてこなければ、

別に何の問題もない。


人間にも妖怪にも好戦的なものはいて、

例えば緑箋も鬼と戦ったりしているわけで、

別に魔族だからといって特別な気持ちがあるわけではない。


かといって、この世界の人にとってみれば、

魔族は敵であるし、

魔族によって大切な人を失った人もいるのだから、

なかなかすぐに手に手を取り合って仲良くしようと、

そんなわけにはいかないのも理解できる。

ただ、血も涙もないと思っていた魔族たちも、

こうやって一緒にご飯を食べてみたら、

全てが一緒だとは言えないにしても、

分かり合える可能性はあるということがわかった。

結局は種族ではなく、個々にあるのだと。

ただ個々の上には大きなものが存在しているので、

それぞれに振り分けられてまた違ったところで対立が起きたりする。

緑箋は本当に面倒なことだなと思ったが、

その大別によって人がまとまって生きていけるということでもあるのだから、

いい面も悪い面もあるというだけなのだ。


食事も終わり、

魔族たちも一緒に片付けを行う。

ここでもやっぱり普通の人同士のように振る舞っている。

魔族だからもしかしたら裏があるのかもしれないが、

考えてみればそれは人であったとしても同じである。

もし裏切られることがあるなら、

その時に考えればいいことだ。


「じゃあカレンさんとお供のお二人は一緒に来ていただきます。

別に連行するわけではないですから、

皆さんも心配なさらないでください」


朱莉が説明する。

緑箋たちはこの魔族開放区を離れて移動することになった。


朱莉と遼香が先頭で道を案内する。

カレンたちはその後をついていき、

さらに後ろに緑箋たちがいる。


「なあ、緑箋君。これからどこに行くのか知ってる?」


幽玄斎が緑箋に聞いてくる。

これには代田もたえも興味深々のようであった。


「どこに行くって帰るんですよ?」


帰る?三人は口を揃えた。


「はい、だから鳳凰寮に帰るんだと思いますよ」


「ちょっと待って、ってことはここはいつものところってこと?」


「そうですよ。ちょっとというかかなり離れてますけどね」


「ここってこんなに広かったんですね」


たえも代田もびっくりしている。


「そうなんですよ。

僕も端がどこまでか知りたくて結構遠くまで行ったんですけど、

本当に地球と同じくらい広いんじゃないかと思うくらいの広さかもしれませんね。

山もあれば川も海もありますから、すごい空間です」


空は飛べないので調べなかったことを緑箋は話題にはしなかった。

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