第465話 魔族大移動
朱莉が説明を続ける。
「では今から別のところへ転送いたします。
人数が多いので一度に全てというわけにはいきませんが、
今特別な転送装置を設置しておりますので、
その準備が整い次第移動していきましょう。
その旨、こちらからも皆さんにご案内させていただいております」
すでにその魔族たちにも周知されているようである。
待ち時間の間、
遼香が緑箋のところにやってきた。
「緑箋君、一つ頼みがあるんだが」
緑箋はとてつもなく嫌な感じしかしなかったが、
まず話を聞くことにした。
「嫌な予感しかしませんが、
とにかく話は伺います」
「ちょっとカレンと戦ってもらいたいと思って」
そういうことかと緑箋は頭を抱えた。
「遼香さん、そんなことをしたら大変なことになりませんか?」
「何をいってる、ただの模擬戦じゃないか」
「いや、遼香さん、
この勝敗に嫌なもの賭けようと思ってますよね」
遼香は不敵に笑った。
「まあそういうことだよ」
「それ、本気で言ってますよね」
「当たり前だろう。私は本気のことしか言わないよ」
それはその通りである。
遼香は自分がやろうと思ったことはとりあえず実行してみるのだ。
そして今回は本当は自分がカレンと戦いたかったのであろうが、
それは問題になるからと、実際は譲歩しているのである。
「まあそれは向こう次第ということになりますね」
「そうか、やってくれるか。
いつもすまないな」
遼香と微妙に話がずれていることを指摘する間もなく、
遼香は喜んでいる。
「いやでも遼香さん、本当に大丈夫なんでしょうか?」
「これから移動する場所のことですよ」
「ああ、緑箋君は大体わかってるんだね」
「まあなんとなくですけど」
「考え方次第だと思うが、
一番安全なところで保護したいというだけだよ」
「それとカレンさんのことでしょう?」
「まあそれは副産物みたいなものだよ」
遼香は笑った。
敵も味方も関係なく、自分の興味に素直に生きる、
それが遼香の凄いところである。
緑箋が今ここにいるのもその遼香のおかげなのだから、
緑箋にはなんとも言えないところもあるのだ。
「では準備ができましたので、
皆さん移動してもらいましょう」
一同は揃って臨時の転送装置まで移動した。
数百体は流石に無理だが、
大型の魔族でも10体ほどは一度に移動できるような大きさになっている。
おそらく軍事用に作られているものなのだろう。
流小野の部隊の指示に従って順番に移動してもらう。
「幽玄斎さんと代田さんとたえちゃんも一緒に移動してくれるかな。
向こうの準備ももうできてるから、
指示に従って貰えば大丈夫」
「あの、たえも行くんですか?」
代田が不思議に思って朱莉に質問する。
「はい、そうですよ。帰りですから」
えっ?と代田たちが何か言いかけたが、
すぐに転送装置の方へ呼ばれて移動して行った。
「遼香さん、ほんとにすごいこと考えますよね」
緑箋は朱莉にそう言った。
「でも緑箋君も同じこと考えてたって、さっき遼香さんに聞いたよ?
私はめちゃくちゃびっくりしたんだけどね」
朱莉はニヤニヤしながら緑箋を拳で軽く突いた。
緑箋は頭を掻くしかなかった。
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