第455話 朝の準備
朱莉も美味しいご飯を食べられて満足し、
たえも今回の状況に安心したようで、
夕食は楽しげな話を続けて終わった。
明日はそれぞれに分かれて朝から活動することもあり、
みんなは早めに就寝することにした。
翌朝、みんなは早めに起きて、用意された朝食を囲んで食べた。
「遼香さん、そちらの方は遼香さんしか話は知らないんですから、
いつものようにしてちゃダメですからね」
朱莉は遼香に一言釘を刺す。
「大丈夫だって。しっかり予定は出来てるんだから。
向こうに着きさえすれば大丈夫だよ」
「そううまくいけばいいんですけどね。
今回は珍しく遼香さん主導なんですからね」
「あ、そうなんですか?
遼香さんが行きたいところなんですか?」
「いい質問だね、緑箋君。
だがそれは」
「行ってからのお楽しみですよね」
食卓は笑い声で包まれた。
魔族たちの数が多いこともあって、
朱莉と幽玄斎は朝食を食べた後にすぐ出発した。
「僕たちも手伝ったほうがいいんじゃないでしょうか?」
代田そそくさと出ていった朱莉たちを心配していう。
「いや、人が多ければいいというものでもないよ。
向こうはしっかり流小野と一緒にやってくれる手筈になっているから、
大丈夫だ。
我々は我々の任務に集中しよう」
それは遼香の言う通りで、
すでに決められたことを実行するのだろうから、
あとは向こうに任せておけばいいのだろう。
ただこちらの任務に集中しようと言われても、
遼香は相変わらず今日何をするのかを伝えてこない。
遼香が考えているのが果たして任務なのかと言うことも疑わしい。
とはいえ、最初にここに来た時の遼香の緊張感をみていると、
今はとても自然体で振る舞って、
いつもの遼香の雰囲気を取り戻しているので、
そういった意味で驚異があるわけではなさそうなのが救いである。
「どちらに行かれるかわかりませんが、
皆さんも注意してくださいね」
たえは心配してそう言ってくれている。
いろんな出来事が起きているので、
たえも心配なのだ。
「たえちゃん。
今日はたえちゃんにも付き合ってもらうから、
たえちゃんも出かける準備をしてね」
遼香は優しくそう言った。
というかたえも行くことを今の今まで言わなかったので、
みんなびっくりしてしまった?
「ちょっとそう言うことは早く言わないと、
たえちゃん準備してないじゃないですか」
緑箋の言葉に、ごめんごめんと罰が悪そうに謝る。
だがおそらくこれも遼香の計略の内と言うことを緑箋はわかっている。
たえを驚かして喜ばせたかったんだろう。
確かに一人で訳もわからず留守番ばかりしているのはしんどいこともある。
今回はそのたえを連れ出すという目的もあったのだ。
たえは少し驚いたあと、すぐに準備しますと言って部屋に戻った。
「僕らも聞いてなかったんですけど」
緑箋がそういうと、
遼香はただ笑って誤魔化した。
だがその遼香の様子がとても嬉しそうだったので、
緑箋も代田も笑ってしまった。
みんなも準備が整い、遼香の指示に従って出かけることになった。
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