第453話 仕事の後の夕食

浜に簡易的な宿舎を魔法で建造していく。

水属性の魔族たちも多くいるので、

どこかに移動させるよりはここの方がいいと言う判断なのだろう。

数百隊の魔族を収容する施設というだけではなく、

魔族の追跡を遮断するという目的もある。

今の所、今回の魔族たちに追っ手が来ているという情報はないが、

用心はしてもしたりない。

もちろん魔族の中に間者がいないとも限らないので、

わざとここに置いておくという、

そのあたりの監視をする目的も当然ある。

それは全てカレンたちにも共有している。

こちらは別にどのような結果になっても問題がないように対処していくのみである。

まずは信頼関係を築いて行かないことには話は進まないのだ。

簡単に魔族を信頼するなというのは基本ではあるが、

遼香が受け入れるといったのなら、

朱莉はそれに従うのみである。

ここの信頼関係は決して揺らぐことはない。


「では一旦ここで朝までお休みください。

魔族の皆さんも実際のところはお疲れでしょうから、

まずはお休みください。

外の警戒はこちらでも行っておりますので、

安心してお休みくださいとまでは言えませんが、

できる限り体を休めてください」


「何から何までありがとうございます。

このご恩はいつか必ずお返しさせていただきます」


いらんいらんというように遼香は手を振った。

魔族たちは粛々と仮の宿舎に入って行った。


緑箋たちはここは一旦流小野たちに任せることにして、

宿に戻ることにした。

宿ではもちろんたえが待っていた。


「お帰りなさい。

みなさんご無事で何よりです。

あっ!朱莉さん!」


たえはまずみんなが無事に帰ってきたことに喜び、

そしてその中に朱莉を見つけて朱莉に飛び込んで抱きついてきた。

代田は少しだけ寂しそうだった。


「たえちゃん、ごめんね心配かけて。

みんな大丈夫だったから安心してね」


「朱莉さんも結局来たんですね!」


「まあそうなの。ちょっとね」


そういって朱莉は遼香の方を向いたが、

遼香は何も気にせずに部屋に入ってくつろいでいる。

遼香も朱莉もこういうことには慣れっこなのであろう。


「ご飯の方もすぐ準備していただけるそうです」


程なくして料理が部屋に運び込まれる。

急遽朱莉の分も用意してくれたようで、

また海の幸山の幸が並ぶ豪華な料理が揃っていた。

ただ今回はお酒はない。

明日もあるからそれは仕方がない。

みんなしっかり弁えている。

顔はどこか不満そうではあったが。

お酒はないがお茶で乾杯する。


「とりあえずいろんな予期しないことは起こったが、

今のところは無事に終えることができた。

みんな本当によく頑張ってくれた。

まだまだ明日もあるが、まず今日はゆっくりご飯を楽しもう。

乾杯!」


乾杯!とみんなが声を合わせる。

本当に色々なことが起こったが、

みんなが無事でこうやってご飯を囲めることに緑箋はホッとしていた。

みんなもようやく笑顔になってご飯を楽しんだ。

朱莉は今日初めての食事をするように、

うまいうまいと言いながらご飯を吸い込むように食べ続けた。

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