第452話 困った時の朱莉様

「朱莉さん!?」


幽玄斎は後ろから急に話しかけられて素っ頓狂な声を出した。

今日は何度も素っ頓狂な声を聞く日だなと、

緑箋は思っていた。


「幽玄斎さんの言う通り、ほんと無理難題ばかりですよ」


朱莉はそう言いながらも、どこか楽しそうに話している。


「わざわざすまないな、朱莉。

それでどうだいけそうかな?」


「はい、もちろん大丈夫ですよ。

何も大丈夫じゃないと言えば大丈夫じゃないんですけど、

遼香さんの許可があれば基本的には全て押し通りますから」


「まあそういうな。

ちゃんと対応してくれて、

朱莉には感謝しているよ」


「今回、私はここに来る予定はなかったんですけど、

まあこの不測の事態ですから仕方ありません。

美味しいご飯楽しみにしてますからね」


それはしっかり準備しておくよといって遼香は笑った。

突然知らない顔が登場して、

魔族たちは驚きを隠せない。

そして魔族たちを飛び越えて、

話がどんどん進んでいるので、

みんなは呆気に取られている。

もちろんそれは緑箋も幽玄斎も代田も同様である。

龗はずっと寝ている。

朱莉は遼香との漫才が一応終わったので一度咳払いをして、場を整えた。


「あなたがカレンさんですね。初めまして。

私は遼香隊の隊員の猫高橋朱莉ねこたかはし あかりと申します。

基本的には総務、人事、事務、経理、法務、広報などを行なっております」


戦闘以外の仕事の全部だなと緑箋は思ったが、そこは黙っておいた。


「ご丁寧なご挨拶ありがとうございます。

こんな格好で申し訳ありません。

私が今回の魔族を取りまとめておりますカレンと申します。

この度は私たちの受け入れを認めてくださいまして本当にありがとうございます」


カレンは今日何度目かわからないが、腰掛けたまま深く頭を下げた。


「はい、大丈夫です、頭を上げてください。

私が偉いわけではありませんから。

カレンさんの方も無事に紋章除去が成功したようでおめでとうございます。

そのまま無理をなさらずに聞いてください」


朱莉はカレンを気づかって、体の心配をしているようだった。


「まず本日はここに陣を張りますので、

本日はここでお休みください。

一応追っ手が来る可能性もありますので、

警戒は怠らないようにしていただきたい。

先ほどいらしたと思いますが、

山の方からも監視はさせていただいております。

もちろん気が変わった方は帰っていただいても結構です。

事情は分かりましたので、

今回に限り後ろからの攻撃を行うことはありません。

それで今回の確認とさせていただきます。

そして明日の早朝より、

免疫などの検査を一斉に行います。

カレンさんのように追跡されるような魔法がかかっていないかも、

そこで確認させていただきます。

その確認が取れ次第、

ここから一斉に移動いたします」


澱みなく話を進める朱莉に周りは圧倒されながらも、

これからの流れを確認していった。

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