第448話 カレンの覚悟
「遼香さん、遼香さんでもできるんじゃないですか?」
緑箋は遼香にとんでもないことを振られて、
少しだけ争ってみた。
「全体を消すということならできると思うが、
紋章だけを狙ってやるというのは星砕では難しいと思うよ」
そう言われてしまうと、確かに星砕は打撃武器であるので、
心臓だけを狙って攻撃するというのは難しい。
しかし遼香なら、心臓だけ抜き取ることもできるのではないかと、
緑箋は疑っていた。
ただ心臓の紋章だけ狙うという意味では、
どう考えても無月の方が向いているというのはいうまでもない。
「あの……お話中申し訳ありません。
紋章をどうしようとなさっているのでしょうか?」
「ああ、すみません。
おそらくですけど、サタンの紋章なんですけど、
多分消すことは可能かと思います」
緑箋はそう言い切った。
「本当にそんなことができるんですか?」
緑箋が当たり前のように話すので、
カレンは呆気に取られている。
おそらくいつもはこんな表情をすることはないのだろうが、
カレンは今日何度も驚いている。
「まあ時間がありませんので、簡単にご説明しますが、
この私が持っている無月という刀があります。
無月は特殊な力がありまして、
魔族の魔力を無効化することができます」
おおーと周りの魔族たちからどよめきが起こった。
「そんなことが、本当に……」
「何度も実験済みですので、
効果に関しては信用してもらっていいと思います。
今回のように一部の魔族の魔力を消すということも行なっています。
ただサタンの魔力すら消すことができるのかということは分かりません」
緑箋たちは効果を確かめるべく毎日訓練室で魔族との模擬戦闘を行なっている。
そして魔族に魔法攻撃を受けた場合などを想定して、
全体ではなく一部分に対しての効果なども日々調べている。
そこでは基本的に魔族の魔法効果に対して、
無効化できるということはわかっている。
斬るというよりは、刺して効果を浸透させるというようなことをすることで、
効果が出ている。
魔族に対してこれを行うと、魔族の魔力自体が消滅してしまうので、
そこは危険があるのだが、
時間を短縮してやることで、
効果を限定的にすることも可能である。
ただ人間などが魔族の魔法効果に晒された時にその魔法を消した場合、
魔族の魔力にのみ効果を発揮することができるので、
物理的な刀による怪我は全くないのだが、
魔族に刀を刺した場合、
魔族には怪我が残るし、
またその傷に通常の回復魔法が効かないことになる。
つまり心臓を突き刺して仕舞えば、
重大な怪我になってしまうし、
さらに言えば死に至る可能性はある。
このことを説明すると、
カレンではなく、
カレンの側近たちから激しい抗議が行われた。
しかしカレンはそんな仲間を静かに諌めた。
「みんなの気持ちはありがたく思っております。
しかしながら、私は今このお話を信じてみたいと思います。
おそらく今この機会というのは偶然ではありません。
運命とはこういう不思議な縁で繋がっているものです。
もし今緑箋様がここにおられなかったら、
今のような提案はなかったことでしょう。
私はそれに賭けてみたいのです」
カレンの必死の問いかけに、
仲間たちは答えることができなくなってしまった。
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