第447話 カレンの行き先
「寛大なご処置に感謝いたします。
我々の覚悟はすでにできておりますので、
受け入れるとおっしゃっていただいただけで、
これほどありがたいことはございません。
カレンは深く頭を下げた。
「本当にいいんだな?
自分たちの仲間、
もしかしたら親兄弟と戦うことになるかもしれないんだぞ」
遼香は今一度問いただす。
「はい。
全ての覚悟を決めた上で参りました。
本来であればここで殺されていても文句を言える立場ではございません。
受け入れるとおっしゃっていただいたことだけで、
私たちはもう何も申し上げることはございます」
「わかった。手続きはこれからするとして、
あなた方はいったんここから移動してもらうことになる。
流石にここでは目立ってしまうからな」
「はい、ありがとうございます」
カレンの答えを聞くと、
遼香は幽玄斎に耳打ちをする。
幽玄斎は少し驚いた表情を見せたが、
すぐにどこかに連絡をとり始めていた。
「さて、それでカレン、あなたの処遇だが、
あなたも我々と一緒に来てもらうことにするよ」
流石のカレンも遼香のこの言葉には驚いたようで、表情が崩れた。
「桜風院様、それはできないお話でございます。
私がこの地にいることで、皆さんにご迷惑がかかってしまいます」
「私は先ほど全員を受け入れると言ったな?」
「確かにおっしゃる通りです」
「じゃあ何も問題はないな」
「ですが、それはそういう意味では……」
遼香の進行にカレンもついていけていない。
カレンにも話の行く末が見えていないのだ。
緑箋はそんなカレンを少しだけ大変だなと思ってみていた。
「私は口に出したことは守るよ。
だから全員を受け入れるといった中に、
カレンも含まれているわけだ。
それにカレン。君はここまで来て、
彼らだけをこの敵地に残して帰ろうというのかね?
彼らがこの地で本当に生きていけるのか確認しないで、
帰る事ができるのか?」
物騒な話ではあるが、
もっともな話でもある。
カレンさえいなければ、ほぼほぼ相手にならない魔族たちである。
おそらく遼香でなければこんな話にはならずに、
全て全滅させられていたかもしれない。
「桜風院様のおっしゃることはわかりますが、
先ほどからご説明申し上げている通り、
私がこの地にいること自体が危険なのでございます
桜風院様のご厚意に甘えたい気持ちでいっぱいですが、
私はここにいてはならないのです」
魔族たちはカレンのことを心配そうに見守っている。
カレンと離れたくない気持ちと、
カレンの覚悟を尊重したいという思いとが複雑に交差している。
「話はわかっているよ。
心臓にに刻まれたサタンの紋章が問題なのだろう?
仮に、その紋章がなくなった場合、
他に問題はあるのかな?」
「いえ……、紋章がなくなれば、
切迫した問題はなくなります。
もちろんその後に追っ手が来るという懸念はございます」
「そうだな。
じゃあその紋章はこちらでなんとかしよう」
「え?」
カレンは今までの落ち着いた声とは全く違った、
高い声を出して驚いていた。
すっとんきょうな声を聞いたのは今日は2回目である。
「じゃあ緑箋君、お願いするよ」
遼香はちょっとした買い物を頼むように緑箋に話しかけてきた。
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