第446話 受け入れる条件
「みんなの気持ちはありがたいのですが、
私はここに残るわけにはいかないのです」
なぜですか、カレン様と周りの魔族たちが懇願するように聞く。
カレンはこの世の全ての痛みを受け止めるような顔をしている。
「私にはサタンの紋章が付いているのです」
「そうか、サタンの魔力が濃いと思っていたが、
単純にカレンがサタンの関係者だからと思っていたんだが、
それだけじゃなくて、
サタンの魔法が施されているわけか……」
遼香は今まで感じ取っていたものがなんなのかようやくわかったようだった。
「はい、桜風院様のおっしゃる通りでございます。
今はまだ私のダミーがおりますので、気が付かれてはいないでしょうが、
気が付かれた場合、この紋章で私の居場所は捕捉されてしまいます。
紋章によって私が死ぬだけならいいのですが、
大規模な爆発によって多くの犠牲者を出してしまうかもしれません」
緑箋は静かにカレンの答えを受け止めた。
緑箋は今この時も危機に瀕していることを驚いてはおらず、
いつ死ぬかもしれないという状況において、
カレンが冷静に対処しながら、
仲間のことを慮っていることに驚いていた。
そこで一つ質問をしてみた。
「そのサタンの紋章はどこか見えるところにあるんでしょうか?」
「いいえ、心臓に埋め込まれております。
そしてもし心臓を破壊して復活させたとしても、
その紋章が消えることはありません。
私はこの紋章から逃れることはできないのでございます。
ですので、私がこの地に止まることはできません。
勝手な要望で本当に申し訳ありませんが、
仲間たちだけでも受け入れていただけないでしょうか」
カレンは必死に訴えかけている。
この状況を見てカレンが嘘をついているのか、
それとも本心なのかということは緑箋にはわからない。
魔族なのだからということではなく、
人が何を本気で言っているのかというのはわからない。
心が読めるスキルを持っていればわかることもあるが、
その精度というのは実はそれほど高くない。
相手が対処してしまうとその確率は大幅に下がるのだ。
特に魔族に対してはほぼほぼ効かないと思った方がいいと言われている。
なぜなら魔族は嘘をついているという自覚がないことが多いからだ。
咲耶ならばもしかしたらわかるのかもしれないな、
緑箋はそう思って少し懐かしい気持ちになった。
「話はわかった。
ここにいる全員を受け入れることを約束しよう。
そこで、まずこちらの要望としては、
日本で自由に行動してもらうというわけにはいかない。
こちらの用意した場所に住んでもらうということなる。
ただ牢屋のような個室にずっと入っているということではなく、
一定の範囲内での移動は自由としたい。
またただそこで遊んでもらうのではなく、
仕事のようなことをしてもらいたい。
魔族の情報については話してもらっていいし、
話さなくてもいい。
真贋はわからないからね。
それともう一つ。
もし我々が魔族と戦うことになった時、
あなた方にも戦ってもらうし、
我々はあなた方の関係者ということを全く考慮しない。
もちろんまだこれから詰めていかないことはあるけれど、
とりあえずは、それでもいいというものはこちらで受け入れることにする」
遼香ははっきりとそう告げた。
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