第445話 束の間の安全
「今回の部隊の隊長は私ですが、
これ以上のことになりますと、
私の方では判断ができかねる事態かと思われますが……」
流石に話が大きすぎて流小野も困惑している。
助け舟を乞うように遼香の方を見た。
「いや流小野の言う通りだな。
ここまでありがとう。
とりあえず、警戒はそのままで、
一応、今回は戦闘の方は行わないという指示を出しておいてほしい。
それと、浜辺の方で目立たないところに、魔族に集まってもらうから、
その場所と指示もしてもらいたい。
カレンさんにもお願いしたいんだが、
こちらのその指示に従ってもらって、
浜辺に集まってもらいたいんだが、
よろしいだろうか?
もちろん、そちらが亡命という希望のままであるのなら、
安全は確保すると約束しよう」
畏まりましたと流小野は部下を伝令に出した。
そしてカレンはありがとうございますと深々と頭を下げた後、
仲間に指示に従うように、そして安全だということを伝えるようにと、
こちらも伝令を出した。
「流小野は警戒をとかずに、こちらで待機して、部隊をまとめて欲しい。
あとはこちらで考えて、また説明する」
流小野は承知いたしましたと答えると、
部屋を出て指示に向かった。
「ではカレンさん、一度浜へ移動しましょう」
遼香と共に一行は部屋を出て、
山の近くにいた魔族と共に、浜へ降りて行った。
浜には百余の魔族が揃っている。
魔族といえば敵という思いが強い時にはわからなかったが、
よくよく見るとどの魔族も弱々しく、
そして怯えているように見えた。
カレンたちが危害はないから安心するようにと伝えても、
警戒する様子はそのままである。
それは当たり前で、
敵だと思っているものの世界のど真ん中に、
自分たちが放り出されているようなものである。
不安は増すばかりであろう。
カレンはその不安と解くために説明をした。
「みんなの安全は保証してもらいました。
日本の魔法軍大将の桜風院様が明言してくださいました。
なのでみんなは安心してください」
カレンの言葉に嘘がないことを知っている魔族たちは、
少しだけ安心した顔を見せた。
しかしその中の一人が質問した。
「みんなの安全とおっしゃいましたが、
カレン様の安全はどうなっているんですか?
私たちだけ助かるということではありませんよね?」
カレンはその質問にしばし沈黙してしまった。。
長い沈黙の後、静かに答えた。
「私は大丈夫。
魔界に戻っても魔王の娘ですからね」
そう言って優しく微笑んだ。
緑箋たちはカレンが微笑んだのを初めてみて、
その妖艶さに驚いていた。
「ダメです、カレン様。
それではダメなんです。
カレン様のお辛いところを我々はもうこれ以上見たくないのです。
我々は魔力が弱いのでなんのお力にもなれませんが、
それでもカレン様、もう魔界に戻るなどと言わないでください」
魔族たちはカレンに縋るように想いを伝えて泣いていた。
カレンは何もいえずにただみんなをのことを撫で続けていた。
緑箋は魔族のことをほとんど知らなかったのだが、
人間のような心を持っている魔族もいるのだなと、初めて思った。
そりゃ、人間にも悪魔のような人間もいるのだから、
魔族にも天使のような魔族がいるのかもしれないなと思った。
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