第441話 魔族の謎の狙い
カレンと名乗る女と共に遼香たちは部隊に戻った。
流小野と共に会議室へ入る。
カレンの後ろには3体の魔族も同伴していた。
流小野が口火を切る。
「この部隊の隊長を務めております、流小野と申します。
カレンさんとおっしゃいましたが、
あなたが部隊の隊長ということでよろしいでしょうか?」
明らかに一人だけ実力が違う。
魔力が高いというだけではなく、
その魔力の質が高いのだ。
引力を持ったような重さを感じさせる魔力である。
「私は隊長と申しますより、
皆の代表という形と思っていただければと思います」
「代表ですか?」
「そうです。
私どもは今回戦いに来たのではありません」
「ではなんの目的で?」
「亡命でございます」
「亡命というのは亡命ですか?
魔界を抜けて日本に来たいということでしょうか?」
「その通りでございます」
「申し訳ないがにわかには信用できない。
今までの個別で魔族が逃げてきたということはありますが、
これほどの大規模な部隊で現れたことはありません」
「その通りでございます。
我々としてもすぐに信用していただけるとは思っておりません。
ただ今現在、我々は姿を現し、
敵と見做される皆様の前に丸腰で現れております。
また外にいる仲間たちも、敵意がないことをご確認されていると思います。
戦闘の意思があるならば、すでに戦いは始まっているはずです」
カレンの言う通りではあるが、
やはり魔族の言葉をそのまま取るのは難しい。
流小野も戦闘を避けたいと言う思いはあるのだが、
この状況をどうすればいいか考えあぐねていた。
「ではまず、敵意がないことは我々も一旦受け入れましょう」
「ありがとうございます」
「まずあなた方の要求があれば聞かせていただきたい。
亡命してどうなりたいのかなどの希望はありますか?」
「私どもはただ普通に生活したい、それだけが希望です。
みなさん、人間たちが即座に我々を受け入れてくれるということはないでしょう。
もし人間が魔界に来てこの同じような要求をしてきた場合を考えてもわかります。
私どもが途方もない要求をしているということは理解しています。
それでも、もう私どもはみなさんの力を頼るしか道がないのでございます」
カレンは一つ筋の涙をこぼした。
まるで宝石のような輝きだった。
その涙が嘘なのか本当なのかはわからなかったが、
美しさだけは本物だった。
「話を整理しましょう。
あなた方は全員亡命を希望ということで間違いありませんか?」
「その通りでございます」
「全員がそういう希望を持っていると。
決してスパイなどではないということですね」
「信用いただけないことは重々承知しておりますが、
その通りでございます」
「それでは亡命ということですが、
どういった事情かということは聞かせていただけますか?」
「少々お時間をいただきますが、
お聞きいただけますでしょうか?」
「まだ夜は長いです。
じっくりお話を伺います」
カレンはありがとうございますと深くお辞儀をした後、
その艶やかで鋭い声で、
ゆっくりと事情を話し出した。
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