第439話 時間が迫って

遼香はまた別行動を取り、

緑箋たち三人は舞台と共に訓練を行った。

考えてみると、緑箋と代田はこういう大規模な訓練は初めてである。

砂浜での訓練は砂に足を取られて大変だと思いきや、

これまた魔法を使うのでそれほど移動は苦ではない。

もちろんそれは敵も同様である。

海から上がってくる水系の敵は、

砂浜の移動は困難ではあるようで、

それは緑箋も体験しているが、

空中の敵はそう言ったものに移動速度を左右されることはない。

双方にとって難しい戦いになる。

空中戦というのはかなり難しくて、

やはり翼を持つ魔族の方が移動には一日の長があるので、

空を飛べるとは言っても、人間の方が不利である。

そんな中もちろん空中戦に特化した隊員たちで構成された部隊の力は心強い。

また鴉天狗などの隊員も数多くいる。


緑箋たちはこの中に直接入って戦うのではないのだが、

それでも参加する可能性はあるので、

指揮に従って戦う場面を想定した訓練にしっかり参加して、

迷惑がかからないようにしていった。

緑箋が子供なのでびっくりしている隊員たちもいたが、

子供が部隊にいるのは珍しいことではあるが、

ないこともないので、それなりには迎え入れてくた。

しかし訓練での緑箋や代田と幽玄斎さいの動きを見るにつれ、

その反応はどんどん変わってきた。

夕方に訓練が終わるや否や、

三人の周りには人だかりができて、

魔法について教えて欲しいと言われてしまった。


夜になり食事をしながら、部隊で歓迎会を行なってくれた。

緑箋をもう子供だと侮っている人はほとんどおらず、

みんな一人前として迎え入れてくれていた。

戦闘が近づいているのでお酒はなかったが、

歌や踊りでみんなで盛り上がり、

一同は団結していくことができた。


翌日はついに決戦の日である。

今の所予測の変更はなく、

今夜魔族の襲来があるということである。


朝食が終わり、遼香隊は集まって作戦会議を行うことになった。

一室を貸してもらい、

朱莉との通信を繋いでの会議になった。

朱莉から説明をしてくれた。


「本日の作戦ですが、すでに資料を送ったとおりになります。

海上からはオクトパス、クラーケン、マーマンなど、

空中はグリフォン、ガーゴイル、インプ、などで構成されているようです。

数の問題はありますが、

これくらいなら脅威はないかと思います。

問題はこれを率いているのが何かということになりますが、

これについてはまだ予測されておりません。

ただ魔王のような大物が来るということは考えられておりません。

でもこの予測に遼香さんは何か予感してるところがあるんですよね?」


「まあそうなんだが、

もしも魔王が来るからといって、

被害が大きくなるという感じなんだが、

魔王ではない何か大きな魔力を持つ存在がくるような予感がするんだよ。

単純にこの前のがしゃどくろのような魔力であれば問題はないんだがね」


「遼香さんがそういうのなら、そうなんだと思います。

ということで他のみんなもそこは注意していただきたい。

基本的には砂浜での戦闘が主になると考えていますが、

遼香隊は山上で待機してもらいます。

山に直接現れる可能性が高いということですね」


「今の所はね」


遼香はそう言いながらも何かむず痒いような表情を浮かべている。

いつものように単純な魔族の気配とは違う何かに、

遼香といえども困惑していたのだった。


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