第438話 気仙沼大島作戦本部

翌日。

お昼までゆっくり時間があるので、

みんなで気仙沼の港へ散歩へ出かけた。

もう朝の漁は終わっているようで、

船着場には船が並んでいた。

落ちている魚を狙っているのか、海鳥の群れが飛び交っていた。


「すごいですね。鳥がたくさんです」


たえは海住まいではなかったのようなので、

海を見るのが珍しかったのだろう、

とてもはしゃいでいる。

そしてその隣の代田はそれに釣られてはしゃいでいた。


お昼までたえと一緒に過ごし、

緑箋と代田と幽玄斎の三人は、迎えの隊員と一緒に気仙沼大橋へ行くことになった。


「皆さん、本当に気をつけてくださいね」


「大丈夫、遼香さんもいるからね。

たえはこっちで気仙沼を少し楽しむくらいでいてくれ」


代田はわざと心配ないようなふりをしてたえにそう言ったが、

流石にたえの心配は取れないだろう。

それでもたえは笑顔で手を振って激励してくれた。

強い子である。

まあ緑箋よりもずっと年上なのだから当たり前ではある。


緑箋たちは山上の駐屯地へ向かった。

部隊内では遼香も待っていた。


「お疲れ様。

じゃあ早速紹介しておこう。

今回の作戦の隊長を務める仙台師団の流小野由香里ながれおのゆかり少佐だ。

そしてこちらは遼香隊の隊員だ」


遼香は双方の隊員の説明をした。

流小野はしっかりと髪を短く切り揃え、

軍人とした格好をしているものの、

顔は柔和でとても優しい雰囲気を醸し出している。

身長はそれほど高くないが、

しっかりと鍛えられた肉体の中に秘められた魔力を感じさせている。


それぞれ挨拶を交わし、流小野が感謝を伝える。


「今回、作戦に参加していただきありがとうございます。

山から監視して、

すでに浜辺にも部隊と罠とを仕掛けております。

また島内を覆うように防御結界は張り巡らせております。

今の所、沿岸の防衛範囲には敵は到達していないと考えられておりますが、

海中、空中からの敵の接近があると考えております。

そして遼香隊の皆さんは遊軍として活動してもらいたいと思っております。

大将ともお話しさせていただきましたが、

今回予想される規模の戦闘は、

本格的な戦闘にはならないのではないかという予想です。

向こうも下見程度なのではないかと考えています。

ただ遼香さんの予測、ではそうではないということなんですね?」


「まあ私の場合は単純な勘だがね。

今回は大物がいるという感じはしないんだが、

それでも何かきな臭さを感じている。

表向きの敵に関しては流小野に対処してもらって、

我々は裏の敵の目的や敵の様子を捕捉したいと考えている。

何もなければもちろん普通の戦闘に参加するようにはなっている」


緑箋たちはわかりましたと答えた。


「予測では明日の夜となっておりますので、

それまではこちらで一緒に作戦の確認と訓練をしていただきたいと思っております」


はい、よろしくお願いしますと返事をして、

緑箋たちは気を引き締めた。

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