第437話 気仙沼の夜

夕食には豪華な料理が並んだ。

気仙沼といえばやっぱり魚である。

豪華な魚の刺身や煮付けなどが並ぶ。

たえも嬉しそうにその料理を食べている。

その姿を見て代田がゆっくりと頷いている。

代田も四国で美味しいものを食べてきていたので、

こうやってたえに美味しいものを食べさせてあげたいという思いが、

今日ようやく叶ったのが嬉しかったのだろう。


「とっても美味しいです」


たえのその言葉にみんな微笑んだ。


「あの、幽玄斎さん。

襲来予報っていうのはどういう仕組みなんでしょうか?」


緑箋は魔族の襲来を予報するという仕組みが知りたかったのだ。

前の世界では衛星などを使って予報というよりは監視できるわけだが、

こちらの世界では魔法が使えるとはいえ、

流石に監視まではできていない様だったから、

どのように予報しているのか気になっていた。


「僕も詳しくは知らないんだけど、

一応魔族の島からの魔力の影響を各地で観測しているみたいで、

そこからの情報を集めてより濃度が高くなる地点が危ないっていうことと、

あとは宣託だね」


「宣託ですか?」


「そう、未来予知というか、未来の映像が見えたというべきかな。

これはみんなも知ってる通り確実性は低い。

見えたものが確実に起こるかどうかはわからないんだ。

しかもその時点の未来だから、

それがそのあと様々な要因でどう変化するかもわからない。

ただ魔族の魔力の流れと、この選択が妙に一致することがあると、

宣託が現実のものになる可能性が高いらしい。

今回は地点もかなり限定されているから、

多分ここで何か行われる未来が見えたんじゃないかな」


「なるほど、じゃあ前の潮岬の時も予報は出てたんでしょうか?」


「ああ、その話は聞いてるけど、

あれは予報は出てなかったと記憶しているよ。

あくまでも宣託なので状況によっては抜け落ちてしまうものも多いし、

あそこは確かあの時は結界の範囲外だったはずだからね」


「そういうことだったんですね。

今日の予報で言うとまだ確率が3割程度ということですが、

危険性はありそうですか?」


「そこまでは僕にもわからないけど、

これくらいの予報は年に数回程度のものだね。

ここ数年は魔族もちょっと落ち着いているみたいだから、

今日のはもしかしたら珍しいって思う人もいるかもね。

でもだからって気を抜いたらだめだよ。

僕はどんな予報よりも、遼香さんが素直に行動してることの方が怖いから、

多分何かあるんじゃないかなって思ってる。

予知もできないはずなのにね」


「確かに遼香さんがすっと合流に向かったのはびっくりしました」


だよねとみんなは笑った。


翌日の昼頃にこちらにまた隊員が迎えにくるので、

それまでに準備をしておくようにと確認した。

そしてたえには申し訳ないが、ここで待機ということになった。


「大丈夫です。お気になさらず。

みなさんの方こそ気をつけてくださいね」


たえはそういってみんなを心配してくれた。

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