第436話 気仙沼へ
幽玄斎も支度を整えて執務室へ帰ってきたので、
朱莉が後を幽玄斎に任せる。
「じゃあみんな揃った様だから、よろしくお願いします。
幽玄斎さん、何か困ったことがあったらいつでも連絡してください」
「分かりました。ありがとうございます。
ではみなさん参りましょう」
「みんな気をつけて、いってらっしゃい」
みんなは朱莉と手を振って別れた後、
明らかに緊張している幽玄斎を先頭に執務室の転送装置から、
一気に気仙沼まで飛んだ。
許可が出ているので全国どこでも行けるのが特権である。
「えっとですね、部隊はすでに気仙沼大島の亀山に陣取っております。
遼香さんはこれから亀山の方で合流する予定です。
迎えのものがもうすぐここにくるはずです。
我々は気仙沼で一泊した後、明日の朝合流する予定になっております」
緑箋はこれは遼香が駄々をこねるんじゃないかと思ったが、
遼香は素直に頷いた。
「わかった。じゃあ明日合流しよう。
君たちは今日はゆっくり過ごして体を休めてくれ。
たえちゃんも遠慮しないでいいからね」
「ありがとうございます。
遼香ちゃんも気をつけてくださいね」
遼香も笑ってありがとうと返した。
どうやら緑箋と代田がいないうちに、
遼香とたえの仲も深まっている様である。
こちらの姿を見つけて、小走りに魔法軍の隊員が走ってきた。
隊員は名前と階級を名乗りお迎えに参りましたを頭を下げた。
「こちらのものはまた明日合流するから、
今日は私だけそちらに合流する。
それじゃまた明日。
案内の方よろしく頼む」
遼香はそういって隊員とともに気仙沼大島へと向かった。
当たり前と言えば当たり前だが、
遼香はあらかじめ決められた通りにことを進めていった。
普段の姿からは考えらないが、
むしろ普段の姿の方が遼香にとっては珍しいのかもしれないと緑箋は思った。
「では我々も今日の宿の方にいきましょう」
残りのものは気仙沼の宿に泊まる。
まだ敵襲がないということもあるし、
たえもいるしということで、
朱莉が気を利かせてくれたのだろう。
今夜の宿は気仙沼の港近くの旅館で、
ちゃんとの四つの部屋に分かれている大きな部屋だった。
広間の窓からは、少し遠くに気仙沼大島も見えた。
たえはそんな景色を眺めながら、ぼーっとしていた。
「どうした?気分でも悪いのか?」
代田が心配そうにたえの顔を覗き込む。
「そうじゃないんです。なんか懐かしい様な気がしたんです」
たえは元々福島の方の旅館にいた座敷わら氏である。
なのでこういった旅館が懐かしいのかもしれない。
「今日は旅行気分でのんびりしょう。
たえさんも楽しんで」
幽玄斎はわざと明るくいった。
はい!と元気な声でたえは返事をした。
少し明るい顔を取り戻していた。
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