第435話 たえが同行?

緑箋と代田と遼香は鳳凰寮まで軽く飛びながら急いで帰った。


「遼香さん、そんなに危険な感じなんでしょうか?」


緑箋は思い切って聞いてみた。


「いや、そんなことはないよ。

予想通りの規模の敵だと今は考えている」


「じゃあなんで遼香さんが出張る必要があるんでしょうか?」


「時間があるからだよ」


遼香はそう言って豪快に笑った。


「それならいいんですが」


緑箋は遼香の言葉に嘘はないことはわかっているので、

それ以上深く聞くことはしなかった。


「それから、代田。今回はたえちゃんも連れて行くから」


「え?そうなんですか?」


代田はたえを危険な目に合わせるのではないかと不安な顔をしている。


「もちろん戦闘には連れて行かない。

あくまでも後方で支援してもらうことになるから、

そこは安心してくれ。

戦闘というよりも他のことでたえちゃんの力が必要になるかもしれないんだ」


鳳凰寮に着くと、代田はたえを呼び出した。

たえは急いで玄関までやってきた。


「どうか致しましたか?」


「今から気仙沼の方に行くことになったんだ。

準備を手伝ってほしい」


たえは代田の言葉を聞いて少し暗い顔をしたが、

すぐに表情を戻してもちろんですといった。

すると遼香が口を開いた。


「たえちゃん。悪いんだけど、

今回はたえちゃんもついてきて欲しいんだ。

危険なことはないからそこは安心して。

たえちゃんも一緒に支度してくれるかな」


「そうなんですね。わかりました。すぐに準備します!」


たえは少しだけ明るい顔をして代田と部屋に戻って行った。


三人が四人になりすぐに支度を終えてとりあえず応接室に集まる。

遼香以外の三人は大したものもないのでカバン一つだが、

遼香だけ明らかに荷物の量が違う。

引っ越しするのかという量をみんなで手伝って移動用の箱に収納した。


「いや、すまないね。助かったよ。ありがとう」


「その荷物いったいなんなんですか?って言っても教えてはくれないんですよね」


「緑箋君、よくわかってるじゃないか。

でもこれは魔族とは関係ないから、そこも安心して大丈夫だ」


「なんか魔族とは関係ない話ばっかりですけど、

大丈夫なんですか」


「まあ多分大丈夫だよ」


遼香がそういうならばきっとそうなのだろうという安心感はある。

四人は時間前に執務室へ戻った。

幽玄斎はまだきていない様だったが、朱莉は部屋で待っていた。


「お帰りなさい。幽玄斎さんはちょっと引き継ぎが長引いたから、

もうちょっとかかるかもしれないわね。

ちょっとゆっくりして、資料の方読んで、

質問があったら聞いてください」


たえがそろそろと手をあげた。


「そっか不安だもんね。

安心して。たえちゃんが危険な目に遭うことは絶対にないからね」


「いやそうじゃないんです。私が言って何かできることがあるんでしょうか?

皆さんの身の回りのお世話はさせていただきますが……」


「お世話をしてくれるのはありがたいんだけど、

今回はたえちゃんもちゃんとした任務として同行してもらいます。

戦闘の方とは関係ない任務として言ってもらって、

魔族の襲来によって予定が変わる可能性があるので、

まだ詳細は教えられないんだけど、

たえちゃんにもちゃんとお仕事をしてもらいます。

もちろんこちらでたえちゃんが上手くできるように案内させてもらうから、

そこは安心してください」


誰も詳細がわかっていないので同じ不安を抱えながらも、

どこか安心感もあるという不思議な状態だった。

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