第417話 ようやく本州へ

伊弉諾神宮を出発した緑箋たちは、大阪を目指す。

今回は転送装置を使わずに、

淡路から本州へ渡守にお願いした。


前の世界では本州と四国は橋がかかって、

3つの方法で行き来できるようになっている。

1988年に開通した瀬戸大橋。

岡山と香川を繋いでいる。

全長約37km。


1998年に開通した明石海峡大橋。

兵庫と淡路島を繋いでいる。

そして淡路島と徳島は大鳴門橋が繋がっている。

全長約89km。

阪神淡路大震災で1メートル距離が伸びたという。

しかしその耐震性は証明されることになった。

ちなみに明石海峡大橋は明石ではなく、

神戸にかかっている。


1999年に開通したしまなみ街道。

広島と愛媛を繋いでいる。

瀬戸内海に浮かぶ多くの島を橋で繋いだ形になっている。

全長59km。

徒歩や自転車でも行けるというのが魅力的だ。

2000年を前にして相次いで本州と四国が結ばれている。


しかしこの世界では橋がかかっていない。

人が飛べるから、必要がないのだ。

とはいえ長距離飛ぶというのは、

人によっては魔力的にかなり難しい面もあるため、

交通手段として飛行船がよく使われている。

飛行船と言っても、ヒンデンブルク号のような、

両端が尖ったような葉巻型の機体ではない。

文字通りただの船が空を飛んでいくだけである。

魔力の力を利用して空を飛んでいくのだ。

波に揺られることもないので意外と快適であるし、

潮の力に押されることもないし、

その景色も素晴らしいものがあるので、

意外と人気なのだ。

この船は低空を飛ぶ船になっているので、

緑箋も安心である。


青い海白い雲を楽しみながら、淡路を飛び出して、

緑箋たちはようやく本州に帰ってきた。

まだ時間があるので、

途中三ノ宮に寄ってご飯を食べることにした。

三ノ宮はこちらの世界でも港町であり、

海外との交流も深い。

そこで今回は珍しく洋食料理やさんでご飯を食べることにした。

前の世界で外食をする機会が滅多になかったとはいえ、

流石に洋食料理が当たり前だった緑箋には驚きはなかったし、

各地へ出張へ出かける朱莉も珍しいものではないようだったが、

代田にとっては初めての洋食料理だったようだ。

選べない代田に、朱莉はミックス定食を提案した。

ハンバーグにエビフライにアジフライと、

一度に色々な味が楽しめる夢の料理を推薦すると、

わからないのでそれでお願いしますと代田は緊張しながら答えた。


朱莉と緑箋はそれぞれステーキとカキフライ定食を注文。

結局みんなで少しずつ分け合って、

いろんな味を楽しむことにしたのだった。

今回の3人は別に分け合うことが嫌いではなかったようだったので、

こんな感じになった。


フォークとナイフを見るのも初めてだった代田には荷が重そうだったので、

お箸で食べることになった。


「いただきます!」


3人の豪快な声が店内に響き渡る。

実は寮では結構色々な料理が出ていたので、

緑箋にとってはこちらの世界でも珍しい料理ではなかったのだが、

代田は慎重に食べ進めて行っていた。


どれを食べても初めての味だったようだが、

うまいうまいと全て完食してしまった。


「いやーこんな美味しいものが世の中に存在するとは思いませんでしたよ。

これはたえにもぜひ食べてもらいたかったなあ。

今度たえにも洋食屋さんで食べてもらわないといけませんね」


代田はいつでもたえのことを考えている優しい人だった。

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