第402話 松山の終わり

宴の翌朝。

朝ごはんを食べに用意されていた部屋に行くと、

代田と朱莉も席に座っていた。

二人とも結構お酒を飲んでいたようで、

少しだけ二日酔いのような顔をしていた。

それでも少し笑顔を作って、二人ともおはようと挨拶してくれた。


「呪文をかけておきましたけど、

今日の調子はどうですか?」


緑箋は酔い覚ましではなく予め酔虎覚醒湯をかけておいたので、

その効果を知りたかった。

自分で飲んでもいいのだが、

こういうのは人に聞いた方がわかりやすい。

戦闘で役に立つことがあるかはわからないが、

自分のスキルの効果は知っておいた方がいいし、

他の呪文の効果の推測にも役に立つのだ。


「当日はとってもいい気分でお酒を飲めたし、

記憶も失わなかったり、

失態も犯さなかったと思うから、

すごくありがたかった。

でも今日までは効果が続いているわけじゃないみたい。

二日酔いは二日酔いになるみたいだね」


朱莉は少しだけ頭を抑えながら話してくれた。


「お酒を分解する効果があるわけではないのかもしれませんね」


「いや、多分その効果はあったんだと思うよ。

それ以上に飲みすぎたのが二日酔いの原因だと思う。

みんなに飲まされちゃったからね」


飲まされたのか、飲んだのかはきっと答えがないだろうから、

緑箋は静かに話を聞いておいた。


「朝ごはんを食べたら、今日は六右衛門狸さんの港の検証に行くから、

準備しておいてね」


魔族が直線関与しているとなると流石に大ごとであるので、

せっかく近くまで(とは言っても逆側だが)きているし、

狸たちとの連絡も取りやすいわけなので、

そのまま緑箋たちが調査に向かうことになったのだ。


準備を終えて道後温泉本館の玄関のところへ行くと、

名だたる狸たちが勢揃いしていた。

握手と感謝を伝えられた後、

代表として隠神刑部が話し始めた。


「この度の狸騒動でご迷惑をおかけしたことをお詫びします。

そして解決に多大なる尽力をいただいたこと、

本当に感謝しております。

狸一同、このご恩は決して忘れません。

我々の力が必要になりましたら、

いつでもお声がけください。

必ず駆けつけます。

本当にありがとうございました」


隠神刑部の礼と共に、

他の狸たちも一斉に頭を下げる。

流石に緑箋たちも恐縮しきりである。

そして金長狸が前に出てくる。


「他の狸たちはまだ後片付けが残っておりますので、

こちらで失礼致します。

これからはこの金長狸がご案内いたしますので、

何なりとご申し付けください」


そう言って大勢の狸たちに見送られながら、

緑箋たちは松山を後にすることになった。


「六右衛門狸さんには話が聞ける状態でしょうか?」


やはり話の中心人物である六右衛門狸に聞き取りをしないことには始まらないので、

朱莉は金長狸に質問した。


「六右衛門狸はもう正気に戻って後はなんでも協力するっていう話です。

向こうで待たせてありますので、

なんでも聞いてやってください」


そんな話をしながら松山城から転送して移動した。

着いた先は徳島城であった。

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