第400話 無月の特性

無月に関することを聞かれて、

緑箋は無月について話し始めた。


無月の中に含有されている煌輝石の効果によって、

属性魔法を纏わせることで、

攻撃された側の体をその属性に変化させてしまうということと、

魔族特攻の攻撃属性が元々持っているということはわかっていた。

ただ問題はその攻撃は煌輝石の含まれた武器で直接攻撃しなければならない、

というところにあった。

斬撃を飛ばしたり、

火属性を纏わせた後に火の玉を出したりしたところで、

それに煌輝石の効果は乗らないということである。


魔法使いは基本、遠距離、中距離が得意な位置である。

遼香のようにガンガン前に出ていって戦う、しかも大将自ら、

ということはほとんどない。


実際はほとんどないこともなくて、

特に魔族は自分の力を過信しているので、

力があるものほど一番前で戦うものも少なくないのだが。


ということでこの無月でいかに直接攻撃をするかというのかが課題の一つだった。

無理に刀で攻撃することにこだわる必要はないのだが、

なぜそこに執着したのか。

それは単純にかっこいいからだ。

流石の緑箋も、この無月を受け取ってしまったからには、

どうやったらかっこよく使えるかということを考えずにはいられなかったのだ。

浪漫とはそういうものである。


単純に考えた時に無月を長くする、大きくするということが一番理想的である。

だがこの無月に強化魔法をかけてもうまく効果が現れなかった。

長くしたり大きくしたり、軽くしたりなどという効果が現れなかったのだ。

属性魔法はあんなに乗るにも関わらず、

強化魔法は上手くかからない。

まるで無月に意思があるように思えるほどであった。

ということで結局は近づいて斬るしかないという結論に達し、

そこは剣の道の達人である幽玄斎と訓練を続けていた。


しかしある時、代田が無月を貸して欲しいと言い出した。

もちろん緑箋は快く貸してあげたのだが、

代田が持った時に無月の的っている空気が変わったのだ。


「代田さん今何かしましたか?」


「いや何もしてないですけど。

確かに今、魔力を吸い取られているような気がします。

でも緑箋さんの時とは違った感じはしますね」


代田がそう答えたので、

幽玄斎や朱莉、そして遼香にも無月を持ってもらった。

しかしこの時は緑箋が持っている時と同じような感覚だった。

その時、たまたま訓練室をたえが覗きにきたので、

説明をした上で、無月をたえに持ってもらった。

あまり持ちすぎると魔力が失われてしまうので、

すぐに離してもらったが、

やはりたえが持ったときは明らかに緑箋とも代田とも違う反応を見せていた。


「これってもしかしたら、

種族の魔力特性も受け継いでいるのかしれないな」


遼香は無月を持つ人によってこう変わるのをみて閃いたようだった。

ということはと龗にも無月を持たせてみると、

やはりどれとも違う感覚を無月から感じた。

具体的に何が違うのかはわからないが、

何かが違うということはわかったのだ。

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