第399話 事前情報

次は金長狸が緑箋に話を聞いてきた。


「緑箋殿、

色々な作戦を立ててもらったが、

それがズバリ的中していたから、

今回はかなり被害が少なくなったと思うのだが、

あれは一体どういうところから閃かれたのかな?」


実を言えば今回の作戦は別に緑箋一人の作戦ではなかった。

あらかじめ遼香の予測の通りに何かが起こるのではないかというのが、

3人の共通した認識だった。

それに基づいて朱莉が四国の情勢を聞き取りをして、

噂話から、それに基づく事実確認などを的確に行なっていた。

確証はなかったが、今回の狸会議にが襲撃されるという予測は立てられていたのだ。

しかもそのきっかけは単なる中での争いではなく、

魔族の関与というのは早くから疑われていたのだ。

日本というのは島国であるために、

魔族の侵入をすべて防ぐというのは非常に困難である。

強力な魔力に関しては感知出来る体制は整えられているため、

魔族の転移装置の設置などはかなり難しいと思われている。

また魔族は自分の魔力を抑えることはほとんどないので、

上位の魔族の力というのは検知されやすい。

ただ今回は魔族の魔力を隠すというよりは、

変化させていたというところがあるというのと、

直接マモンが現れたというわけではなさそうなので、

そのあたりの策略に、

六右衛門狸が引っかかってしまったということになると考えられている。


今回、緑箋たちはいくつかの決まり事をしっかり考えており、

それに関して対処するようにしてきていた。

そしてその中で実際の現場で起こっていることを総合して、

作戦を立てるということは緑箋と代田に任されていた。

朱莉はそれに関して後方支援や実現するために動くという手筈であった。


緑箋はわざと狸の妖術で身を隠してもらっていた。

これは緑箋のスキルを使わずに温存したいという目的があったからだった。

緑箋は明らかに操られているような狸たちを捕獲し、

その魔力に関して調査を進めていたのだった。

そしてその魔力が魔族由来のものと確認できた段階で、

ようやく最後の手段を取ることができたということになる。

がしゃどくろを代田の手で葬り去ることももちろん可能ではあるが、

それでは解決しない問題が出てくるのは明らかであり、

魔族の力を確認した後に対処するというのが必要になると考えていたので、

そこに少し手間取ってしまったのが今回の反省点ではあった。

ということを噛み砕いて緑箋は説明した。


「なるほど。

そんなことがあったわけですな。

六右衛門狸が魔族に操られているというところが味噌だったのですな」


「そうです。

もし自分の判断での反乱であれば鎮圧することは簡単でしたが、

事前の情報から、今回は魔族の関与が高いという確信がありました」


「で、最後の一閃ということになるわけですな。

あれは本当にすごかったですが、

一体あれはなんだったんですか?」


狸たちはあの一閃に興味津々である。

狸たちもやっぱり少年のような心を持っているようだった。

ああいう場面には心躍ってしまうのは狸も人間も同じなのだった。

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