第392話 巨人対巨人

金長狸の前に出現した巨人は、

しっかりとがしゃどくろの拳を受け止め、

さらに大きく巨大になっていく。

大狸会場と同じくらい巨大になった巨人は、

軽く拳を握ると、がしゃどくろに拳を振り下ろす。

しかし六右衛門狸も負けてはいなかった。


「なんのこれしき!」


六右衛門狸は気合を入れて魔力を上げると、

がしゃどくろもさらに大きく巨大化する。

まるで怪獣大決闘である。

巨人よりも小さいとはいえ、

かなりの大きさのがしゃどくろと巨人が対峙する。


ただ、大きさでは互角に見えた戦いだったが、

明らかに巨人の力に対して、

がしゃどくろの力が足りていないのは明らかだった。


「なんだこの巨人は。

金長狸にこんな力があるとはおかしい!

なんだこの巨人わあああああ!!!」


六右衛門狸が疑問に思うのも無理はない。

なぜならこの巨人は六右衛門狸の妖術ではないのだ。

そう、ダイダラボッチこと代田法師が少しだけ巨人化して見せているだけなのだ。

巨人としての年季が違いすぎる。

どんなに巨大化してもがしゃどくろの攻撃はダイダラボッチには効かない。

圧倒的な力の差を見せつけられてしまっている。


ただ代田もかなり戦いづらそうであった。

後ろにある大狸会場を守りながらの戦いになっているからである。

巨人となっているため、

一つ間違うと、自分の力で被害を大きくしかねないのだ。

代田はがしゃどくろの攻撃を巧みに防ぎながら、

なんとか大狸会場を守っている。


「くそーっ!こんなはずじゃない!

おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい!

お前のせいだ!お前のせいだ!お前のせいだ!」


六右衛門狸が発狂するように叫ぶと、

がしゃどくろの目が怪しく光り、

がしゃどくろがさらに大きくなっていく。


「いかん!

それ以上はいかんぞ、六右衛門狸!」


明らかに六右衛門狸は自らの魔力を超えた力を使い続けている。

さらにがしゃどくろは周りの狸を吸い込み始め、

狸ががしゃどくろの周りを覆い尽くしていく。

どくろは六右衛門狸をも吸い込み、完全に巨人となってしまった。


「六右衛門狸……だめだ……。

戻って来れなくなるぞ……」


金長狸がそう呟くと、妖術を解く。

消えていた緑箋が隣に現れた。


「申し訳ない。緑箋殿。

これ以上は……もう……。

私がなんとかしたかったのですが、

届きませんでした……」


「いや、そんなことはありません。

まだ被害は出ておりませんよ。

大丈夫です。

手筈通りに参ります」


「わかりました。

緑箋殿、お頼み申します」


緑箋は無月を手にもち構える。

金長狸は印を組み無月へ妖力を流し込むとともに、

明王に変化し緑箋を持ち上げて飛ぶと、

代田の手に緑箋を渡す。


「代田さんお願いします」


「任せてください!」


代田はかっと目を見開き、

代田の神の魔力、神力が無月に注がれる。


「龗!」


龗は緑箋の声に答えるように顔を持ち上げると、

真っ青な炎を無月に吐きかける。


「代田さん!

今です!」


緑箋の掛け声とともに、

代田がおおおおおと雄叫びを上げながら、

がしゃどくろだった巨人の頭に緑箋を軽く飛ばす。


緑箋は目を閉じ、

無月に自らの魔力を食べさせるかの如く、

魔力を注ぎ込む。

緑箋がスッと鞘を親指で弾いて鯉口を切ると、

がしゃどくろだった巨人の頭の上で、

無月が黒く輝いた。

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